もちろん、本人があらかじめ認知症に対する正しい知識を持っておくことも欠かせない。正しい知識を得たら、周りの役員などに、「こんな兆候が現れたら、病院に連れて行ってくれとか、私の言動にストップかけてくれとかを伝えておける」(今井院長)からだ。

「おかしいと思ったらいつでも『おかしい』と言え」

 今井院長の師匠に当たるドクターは「僕がおかしいと思ったらいつでもおかしいと言え。僕は気づかないから」と言っていたという。当初は笑い話ぐらいにしか受け止めていなかったが、実際、師匠はその後、どんな患者に対しても同じ診断名をつけるようになった。

 そこで、これはおかしいと思った今井院長はもう一人の師匠に相談したところ、彼から本人に話をしてくれた。するとその翌日、「わかった。では、私はあとは若い人に任せるから辞める。医師としての診断ができないので」とすんなり身を引いたそうだ。

 「経営トップは、認知症になったらどう若い人に受け継いでいくかということを自分の中で、また若い人と相談しながら決めておくべきだろう」と今井院長。「少子高齢化の中、年配の方は自分のお墓のことなどは、結構考えている。それと同じにように、企業のトップは自らの引き際を考えて、格好良く終わらせてほしい。今は認知症が大きく取り沙汰され、世間の関心も集まっている。だからこそ今の経営者は自分が認知症になったときにどうすべきかというのを考えていかないと、これからの企業は成り立たないのではないか」と投げかける。

 認知症はいつなるか、誰がなるか分からない病だからこそ、健康なうちに備えておく必要がある。