(前回から読む)
飯場の女たち
金鉱山はマッチョで野卑な「男の世界」だが、そんな男社会で働く女性たちもいる。「クイジネーラ」(食事を作る女性のこと・賄い婦)と呼ばれる女たちだ。
私たちも撮影スタッフ全員の食事を作ってもらうために、拠点の街で40代後半の女性をクイジネーラとして雇った。彼女は金鉱山に来るのは初めてだったが、ガリンペイロのことはよく知っていると言った。小屋だろうとジャングルだろうと勤めあげる自信もある、とも言った。しかし、彼女は3日で根をあげ、ついには街に帰ってしまった。
「黄金の悪魔」の鉱山に4人のクイジネーラがいて、1人あたり10~15人分の食事を作っていた。
ガリンペイロは朝の6時には仕事に出るから、彼女たちの仕事は4時半に始まり、夜の9時頃まで切れ間なく続く。休みは1日もなく、給料は月に金を30グラム(およそ12万円)だった。仕事はきついが、アマゾンでは十分に暮らしていける給料と言えた。

だが、クイジネーラの仕事には金鉱山独特の苦労がついてまわった。
ガリンペイロたちの舐めるような視線に毎日晒され、始終付け回され、肉体関係を迫られ続けるのだ。
娼婦と違ってクイジネーラはただでヤレる女。ガリンペイロたちはそう思っていたし、公言することも憚らなかった。そのくせ、身体を許したクイジネーラをプータ(淫売)と揶揄し、許さない者を堅物と貶した。
ガリンペイロたちは、私たちが連れて行った中年のクイジネーラの隣にハンモックを吊り、素っ裸で横になった。関係を結ぶまで諦めないという意志表示だ。彼女が逃げ出すにも無理のないことだった。
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