雨季には珍しく、一粒の雨も降らなかった日のことだった。一発の銃声が闇夜に響いた。深夜だった。ぎょっとして飛び起きた。いざこざが起きて、誰かが誰かを撃ったのではないか。緊張が走った。

 音は小さかったが、銃声は確かにガリンペイロの小屋の方から聞こえた。身体が強張った。息を潜めて耳を澄ませた。ずいぶん長い時間そうしていたが、獣や鳥の鳴き声しか聞こえなかった。二発目の銃声も争ったり揉み合ったりする音も聞こえなかった。

 翌朝早く、今度はガリンペイロの歓声で叩き起こされた。普段なら、仕事に行く前のガリンペイロたちが小屋の外で気だるくタバコをくゆらせている時間のはずだった。だが、その朝は、好きなサッカーチームが優勝を決定づける劇的なゴールを奪った時のように、ハイテンションの雄叫びが上がったのだ。

 大歓声は食堂からだった。中に入ると、テーブルの上に野生動物の死骸が置かれていた。「パカ」という大ネズミだった。

 後ろ足の付け根に血が固まっていたので、そこを撃たれたのだろう。踏むと散弾銃が発砲される罠に掛ったのだ。1か月前に仕掛けてようやく掛ったという。夜更けの銃声は、罠の音だったのだ。

罠にかかったパカ。内臓は胆のうを除いて捨てる。胆のうは、干すと毒蛇に噛まれた時の薬になるという (c)Eduard MAKINO

 パカは炭火でじっくりとローストされ、夕食のメインディッシュとなった。げっ歯類のパカの体長は40センチほどで、10人で分けると1人2、3切れしか行き渡らない。だが、誰もが満ち足りた表情を浮かべていた。食堂には肉汁の脂ぎった香ばしい匂いが充満していた。残す者は誰もいなかった。

 肉不足をガリンペイロたちは罠や狩りで補おうとした。

 狩りをしようとすればチャンスは週に一度、金鉱山が休みとなる日曜しかない。腕に自信のある者、どうしても肉を食べたい者、これ以上日曜の賭博で借金を増やしたくない者が散弾銃を持って森に向かった。

 だが、動物の宝庫というイメージのあるアマゾンだが、野生動物と出くわすことは滅多にない。音はすれど、姿は容易に見えない。

 ケッシャーダ(イノシシに似た野ブタ)、ケイマン(小型のワニ)、タトゥ(アルマジロ)、ムトゥン(黒い大きな鳥)、アンタ(バク)が1頭ずつの計5匹。それが、鉱山に滞在した40日間で獲られた野生動物の全てだった。

浅瀬にいる体長1メートルほどのケイマンを斧で叩き切るようにして獲る。味は鳥のささみのようだった (c)Eduard MAKINO