出戻り

 来る者もいれば去る者もいた。戻ってこないつもりで去る者もいたが、半数以上は年に一度の休暇をとっての一時帰宅だった。

 私たちの滞在中、数人のガリンペイロが街に一時帰宅することがあった。誰もが浮かれていた。1人は子どもが生まれたために街に戻るという。「給料でミルクや玩具を買うつもりだ」。いつもはだらしない男がすっかり父親の顔になっていた。

 それ以外の者は街で羽目を外すのが目的のようだった。誰もが1年近く密林の中で金を掘り続けていたのだ。彼らが言った。

「酒に女。それしかないだろ」

 船の出る日、彼らは再び売店に行き、「取り分」と「ツケ」の清算をした。そして、最も多い者で80グラム(32万円)、少ない者で20グラム(8万円)の給料を「金」で受取った。

 だが、彼らが鉱山を去って5日後のことだった。金鉱山に拠点の街から無線連絡が入った。いつもの無線とは雰囲気が違っていた。交信をしながら、無線係の男がゲラゲラと笑っている。

 男は無線のやり取りを終えても笑い続けていた。何が可笑しいのかと尋ねると、男は笑いをかみ殺した表情でこう言った。

 「あいつら、鉱山に戻りたいから船を出してくれってさ。有り金をぜんぶ使っちまったんだってよ。まだ5日しか経ってないのにな。まったく、バカな奴らだよな」

 「金」に憑かれ、「金」を快楽のために使い、「金」を掘るために何度も舞い戻ってくる。

 私たちがいたのは、そういう場所だった。

ガリンペイロの小屋の裏手に墜落したセスナ機の残骸があった。定員を遥かに超えるガリンペイロを乗せていたという (c)Eduard MAKINO

(次回に続く)

 大河アマゾンを遡った遥か先にある、暴力に彩られたガリンペイロたちの「王国」。NHKスペシャル「大アマゾン 最後の秘境」シリーズでは、さらに、私たちがいまだ見ぬ生き物の世界、文明社会と接触したことのない先住民族が生きる秘境も取材している。
 シリーズのラインアップは以下の通り。
第1集「伝説の怪魚と謎の大遡上」 4月10日(日)
第2集「ガリンペイロ 黄金を求める男たち」5月8日(日)
第3集「緑の魔境に幻のサルを追う」6月12日(日)
第4集「原初の人々 イゾラド」7月
※全てNHK総合テレビで午後9時から放送予定