豊穣にして無限。南米・アマゾン川をずっとずっと遡ったその先に「規格外」の人間たちが生きていた……。 4月10日にスタートするNHKスペシャル「大アマゾン 最後の秘境」シリーズ。 その第2集「ガリンペイロ 黄金を求める男たち」(5月放送予定)の番組ディレクターが、放送に先駆けて、アマゾン奥地の「今」を紹介する。 いくつもの支流を分け入った密林の奥、荒くれ者たちが作り上げた金鉱山に潜入した筆者は、映画『地獄の黙示録』さながらの、欲望と暴力と狂瀾に満ちた「王国」を見た。トップアスリートたちが金メダルを競うリオ五輪開催の2016年、同じ南米の奥地には、「金」を求めるもう一つのリアルがある。

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去る者、来る者

 ガリンペイロの世界は人の出入りが激しい。1か所の金鉱山だけで働き続ける者など、まずいないと言っていい。実入りの良さそうな鉱脈が見つかったという噂が立てば他の鉱山へ移ってしまうし、食事が貧弱だと文句を言って辞めていく者もいるし、どこかの金鉱山に若く美人のクイジネーラ(食事を作る女性のこと・賄い婦)が来たと聞いただけで去っていく者もいる。義理人情ではなく、あくまで実利優先なのである。

 〈黄金の悪魔〉の鉱山では、40日間に6人が去り、8人が新たに加わった。

新入りたちの受難

 ある日、3人の新入りを乗せた船が鉱山に到着した。

 この世界では、新入りのことを「ガリンペイロ・ブラボ」と呼ぶ。「ブラボ」とは、本来〈荒くれ者〉や〈乱暴者〉という意味だが、ガリンペイロの世界では〈力任せ〉や〈やみくも〉のような揶揄が含まれていると聞いた。

 新入りは20歳前後の若者たちだった。その1人がこう言った。

 「拠点の街で〈黄金の悪魔〉を見かけたんだ。イカした車に乗っていて、着ている服も高そうだったし、とにかく金持ちに見えた。彼のようになりたいから、ここに来た」

その日、「王国」に3人の新入りがやってきた (c)Eduard MAKINO

 それぞれの持ち場に散る前に新入りたちが必ず立ち寄る場所があった。〈黄金の悪魔〉が経営する売店だ。密林での暮らしに必要なものをそこで買い揃えるのだ。

 彼らは皆、同じ「商品」を買った。大きな、しかしペラペラの、ビニールシートだった。「仕事場」の近くにビニールの屋根と柱だけの掘立小屋を建てるためだ。

 購入した商品も鉱山ならではだが、支払い方も独特だった。「現金」ではなく「金」で支払うのだ。例えばこんな具合だ。ビール1本が0.2グラム(800円)、蒸留酒のピンガ1本0.4グラム(1600円)、単3乾電池10本パック0.3グラム(1200円)。当然のことながら、値段は街場の3~5倍はする。ビニールシートは4メートル四方で2グラム(8000円)。新入りたちはそれを「ツケ」で買った。