「360度カメラの会社に、世界中からアクションカメラを製造委託されている大手が出資し、同時に製造を引き受ける」

「中国通販大手の京東(JD)が、ハードウェア製品を作るベンチャーに出資し、販売をサポート」

「小米がスタートアップを買収し、開発チームをそのまま残して、自分のブランドで販売」

「小米がベンチャー企業に出資し、ベンチャー企業のブランドは残したまま、自分たちのストアでも販売」

「FOXCONNは、将来的に急成長するベンチャーを見込んで、少数でも引き受けることがある」(通常は会社の成長に伴って大手のEMSに乗り換えることが多い)

通販大手JD.Comが経営するカフェ。ここで頻繁にベンチャー企業のプレゼンが行われている。奥にはJDが支援したベンチャーのハードウェアたちが並ぶ

 販売の苦労をしなくていいのは、多くのハードウェアベンチャーにとってありがたい話だ。大企業からしてみても、成長する前のベンチャーに投資すると、「大企業が投資した」ことが成長の一要因になり、確度の高い成長に繋がるから、WIN-WINの関係と言える。単にお金があるだけの大企業じゃなく、製造や販売のサポートなど、事業の上でシナジーがあるならなおさらだ。

 シリコンバレーでもGoogleがNestを、FacebookがOculusを買収したように分野を拡大するために買収する行為は頻繁に行われていて、成功例・失敗例ともに豊富にある。中国はそれをさらに拡大して行っていると言える。EMSによる出資+支援は、中国ならではの例と言えるかもしれない。

ベンチャーの限られたリソースが大企業によって補完される

 立ち上げ段階のベンチャーは、起業家が自分自身でマーケティングも製造計画も担当していることがほとんどだ。専門家ではないかわりに、「従業員には出せない力」がある。だが、会社を大きくしていくには多くの「雇われる人」や「お金を払って他社にやってもらうこと」が必要になる。立ち上げ後の、スケーリングとされる段階だ。

 会社を立ち上げることより、成長させ続けることの方がはるかに難しい。そこではお金の多寡がそのまま力になるし、成長の止まったベンチャーには有能な人が来なくなる。マスイノベーションには、「初期でうまくいったベンチャーをうまくスケールさせる仕組み」も必要だ。

 深圳のベンチャー街には、大企業が運営しているメイカースペースやカフェが多くある。芽が出たベンチャーに大企業が出資し、連携して製品をスケールさせる仕組みが、中国から新しく変わったハードウェアが多く出てくることにつながっている。