今のアクセラレータが非常に注目しているポイントの1つは、「そのプロダクトにお金を払うファンが、現時点でついているかどうか」だ。少数でも実際に支持があるなら、世界が変わって一気に広まることはありえる。コンピュータもスマートフォンも、世間に広まる前にオタクだけのオモチャだった時代はあった。その意味では、以下の2つの点でスタートアップ企業と同人たちは近いと言えるだろう。

  • 世間一般には広まっていないことを、自分たちのモチベーションで続けている
  • 数はともかく、実際に支持しているユーザーたち、コミュニティがある

 違いはビジネスモデル、つまり資金調達をして一気に会社規模を大きくしていこうとするのか、自分たちのできる範囲で活動を続けていくのか、だけなのかもしれない。Appleの始まりがそうだったように、DIYとコミュニティによって駆動する同人ハードウエアは、イノベーションの苗床と言える。

日本の同人ハードウエアは4年で4倍に

 僕の勤務するスイッチサイエンスではそうした同人ハードウエアの委託販売を受け付けている。愛好家が製造したハードウエアを、危険なものや違法なものでないかの簡単な審査をした上、自社のマーケットプレイスに載せて、注文が来たら発送する(問い合わせに対しては作者に転送している)。

2014年から急増し始めた、同人ハードウエアの販売金額

 2014年からこの委託販売を強化したが、2017年までの4年間で市場規模は4倍に拡大している。明るいニュースが少ないここ数年の製造業で、この数字は圧倒的なポジティブさだ。

 僕は世界各地にメイカー向けの製品を作っている友人たちがいるが、日本の同人ハードウエアの質と量は、彼らがなかなか信じてくれないほど高い。どの国のメイカー向け企業も、自社の顧客のモノづくりレベルが上がり、アイデアとクオリティを備えたプロジェクトを生み出すことを願っているが現実は厳しく、マレーシアの友人には「学生のプロジェクトが多く、どこかで見たようなものとか動作が怪しいものが多すぎて、ほとんど採用できない」と言われる。日本の同人ハードウエアを見せたところ、「これはプロが作った工業製品だろう?」と言われたが、その後、友人は東京のメイカーフェアを訪れて僕の話を信じてくれた。

 「深圳の創業ブームはこの会社から始まった」で紹介した深圳のSeeedも深圳発の同人ハードウエアを育てたがっているが、出稼ぎでやってきた農民や一発当てたい起業家による移民の町では、そもそも「同人」という概念を広めるのに苦労している。前回も書いたように、日本はある意味で彼らがあこがれる場所に既に立っていると言える。

深圳のSeeedはメイカーのためのプロデュースやプロモーションもサポートしている。日本のメイカーたちは彼らのあこがれだ