スタートアップからの社会実装がやりづらい国、日本

 メイカー出身のプロダクトやDIYから始まった社会実装は、特に中国ですごく増えてきている。とはいえ、スタート地点ではDIYであっても、実際に製品を世に出す際にはフルタイムの活動になる。第2回で触れたYコンビネータの創業者ポール・グレアムは、スタートアップの仕事を「40年間ゆっくり働く代わりに、4年間ものすごく働く」と表現している。

 ハードウェアの会社を立ち上げるには、提携EMS工場や販売店との付き合いなど、ソフトウェアの会社に比べて多くの社会的リソースがいる。中国や米国のように社会構造が大きく変化し続ける国に比べて、日本のハードウェアスタートアップを取り巻く状況は厳しい。

 メイカーフェア東京の出展者のかなりは仕事を持っていて、週末や休日にものづくりを楽しんでいる。優秀なメイカーは企業のエンジニアとしても優秀だったり、かつて優秀で今は管理職になっていたりする。同人誌的な活動は許されても、副業と見なされるような活動はしづらい。

 また、日本の社会が成熟するに従って消費者保護を目的とした製品への規制がどんどん強化されている。ホンダの創業者である本田宗一郎が湯たんぽをガソリンタンクにしたオートバイの試作品を作った話はとてもメイカーらしいエピソードだが、深圳でそういう風景は見られたとしても、今の東京で見ることは難しい。

 日本は世界に関するコンテンツ大国で、特にマンガは他の国に比べて圧倒的な人気がある。日本のマンガは豊富なインディーズ、同人誌をその土台にしている。そのインディーズ文化は出版社や印刷所などの産業を含めて巨大なエコシステムを構成していて、海外から日本でマンガ家になることを目指して日本に住みつくクリエイターを生むほどのユニークさになっている。そうしたもののハードウェア版として、日本のメイカーからの社会実装があってもいいのではないだろうか。