中国の浙江省に、義烏市という場所がある。「100円ショップのふるさと」「世界の雑貨の中心地」と呼ばれ、世界中から貿易商が集まるこの街には、中国各地の産物が集まり、専用の輸出港やヨーロッパへの直通電車もある。

貿易商としてここに10年以上在住するセネガル人のソーラ氏は、「中国に来てモノの見方が変わった。僕らアフリカは、中国から学ぶことで成長できる」と、中国の成長と新興国アフリカを結びつけて語った。
今回、東京大学の伊藤亜聖准教授の義烏視察に同行して、義烏アフリカ協会のソーラ氏にインタビューした。中国は「一帯一路」を打ち出して、特に米国の影響が少ないアフリカ・アジアとの連携を深めている。インタビューは中国のグローバル化やアフリカの産業化などがうかがえる貴重なものとなった。

「僕はアフリカ人だが、このオープンな義烏の一部だ」
ソーラ氏:僕の会社では37人を雇っていて、ほとんどは中国人だ。さまざまな貿易業務をしているが、工具や工作機械などのハードウェアが多く、アフリカの7カ国のマーケットに輸出をしている。セネガルが当然一番多いが、コンゴ共和国、コンゴ民主共和国、ガボン、ガンビア、ベニン、ガーナにも輸出している。
製品はなんでも義烏で買える。かつてはドバイが仕入れ先だったが、義烏に初めて来たときに、「ここが仕入れのための一番正しい場所だ。もうドバイは要らない」と気づいた。2003年頃に初めて義烏を訪れ、2006年からここに住んでいる。仕入れといえば、広州交易会のある広州が有名で、そこで仕入れているアフリカ人も多いが、広州では必ず複数人の卸業者を経由しなければならず、複雑だ。義烏ではすべてがダイレクトにアクセスできる。このオープン性、アクセシブルな市場は他にはないものだ。もっと良い場所があればそこに行く。今のところ世界でこの義烏がベストだ。
義烏の政府もこのアクセス性を保ち、広げるためにすごくサポートしてくれている。義烏市の政府トップほかVIPたちと、僕のように長く義烏にいて成功しているアフリカ人は、Wechat(中国のSNS)で大きなグループを作っていて、そこに様々な組織の顔役が入っている。一人残らずだ。ここでアフリカ人と義烏の間に起きた問題はすべてオープンに解決される。我々から市政府に提案や指摘をし、受け入れられることも多い。
この街には3000人のアフリカ人がいて、僕のように他の外国から移ってきたアフリカ人も多いが、ここでは「僕らは尊重されている」と感じる。僕らがパーティーを開くと、市政府から多くの人たちが参加してくれる。もちろんどの外国人パーティーでも市政府の人間が来るわけではないが、そういうパーティーを外国人が開けることはオープン性の象徴だと思う。
Powered by リゾーム?