同じメディアテックのCPUを使っていても、深圳には小メーカーだが特殊な用途や見た目のスマホを作っている会社が多く存在する。たとえば「工事現場に向けてバッテリが大きくて頑丈な筐体を作る」と商品企画したときに、スマートフォンのマザーボードをすべて設計しなくても、目的に合った製品を製造して売ることができる。

 こういう商売を方案公司が始めたのは、それがビジネスとして成立するからだ。
「世界の工場」中国には大量の製造業が存在する。アフリカ向けやインドネシア向けの低性能・低価格なスマートフォンも、もちろん高性能なものも、だいたいは中国で作っている。そのため、チップをボードに載せて売りさばくビジネスモデルが成り立つ。

 数少ない大企業しかスマートフォンを作っていない国なら、大企業は自前でインテルやクアルコムからチップを仕入れ、すべて自社で設計して最終製品を販売するだろう。方案公司の出番はない。方案公司は、名もない中小の製造業でも製品を製造して販売してしまう中国だからこそ成立するモデルと言えるかもしれない。

公板が公板を模倣するエコシステム

 公板を用いて最終製品を作るには、製造のための投資と販売努力がいる。コンシューマ向けに作っているのであればカスタマーサポートなども必要になる。それに対し公板そのものを販売するのであればBtoBの商売なので売るときにそれほど手間がかからない。工場から見て性能と価格のバランスも見えやすいので販売はラクだ。

 公板の設計には多少手間がかかるとはいえ、最初の商品はチップメーカーが提案するリファレンスデザインをそのまま製品化することが多い。特許を取って知財で儲けられるほど特殊な技術ではないし、知財でお金を得るにはたいてい長い時間がかかる。

 方案公司は知財で儲けることを意図するより、むしろ流行り物の公板をリバースエンジニアリングし、機能を削ったり安価な適合部品を使ったりして、廉価に販売する。

 たとえば、原価(材料費と作る手間賃)が2000円ぐらいの公板があるとすると、以下のように新たな製品が生まれる。

  • 新しいチップが出たばかりで、他に売ってない公板…8000円 1万枚
  • それが飛ぶように売れ、より生産設備の大きい会社が出す模倣品…5000円 5万枚
  • さらに大ヒットし、求める会社が増えたため、「ヒットした機能」に絞った廉価版…3000円 20万枚

 このように、どんどん「大量に安く作れる」会社が参入し、最終的には2000円に少し上乗せした価格になる。

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