日本だと1億円の製品開発費が、深圳だと500万円に

 深圳で日本向けの製造受託サービス(EMS)を行うJENESISは日本交通のタクシーのドライブレコーダーや車載タブレットなどを製造している。彼らの資料によると日本で1億円・7カ月以上の初期投資が必要な開発が深圳では500万円・3カ月で可能だという。

 もちろんそこまで単純ではなく、その価格で日本向けの品質を実現するにはたゆまぬ努力が必要になる。その全貌は藤岡社長の著書『「ハードウェアのシリコンバレー深圳」に学ぶ』に書かれている。

JENESIS提供の資料。日本では1万個/1万円のハードウェア(1億円)が、深圳では1000個/5000円(500万円)から開発できる。トライアルするには圧倒的に有利だ

 MITの研究者バニー・ファンは、公板などに見られるこうした知財の扱いを、「公開(Gongkai)スタイルの、中国型オープンソース」と呼んでいる。

 良し悪しはともかくこの公開スタイルにより、結果として知財のシェア、再利用、リバースエンジニアリング、小変更や組み合わせ(マッシュアップ)による新規開発が圧倒的にしやすくなり、それはちょうどソフトウェアの世界でオープンソース運動がもたらしたものによく似ていると語る。
(全貌は『The Hardware Hackers』という彼の著書で見られる。僕は2018年中の出版を目指して翻訳中)

西欧では知財はモノとは別に純粋な知財、たとえば意匠権や特許として扱われるが、中国ではモノと知財が公板のような形で一緒に流通する(図は The Hardware Hacker, Bunnie Huang より)

 もちろん、知財が保護されない形だけが深圳ではない。製薬など、旧来の知財モデルでないとうまくいかないビジネスも深圳には存在するし、ファーウェイのような世界で戦う巨大企業は、AppleやSamsungといったライバルたちと同じサイズの知財部を持ち、特許等を数多く申請している。世界企業になるには、コモディティ化された技術だけでは戦えない。ここで紹介している公開(Gongkai)は、あくまでありふれた技術の組み合わせでパパッとつくるような新製品の話だ。

 ただ、技術が早くコモディティ化し、コモディティ化された技術が使いやすくモジュール化されて提供されることは、ハイエンドの技術開発とは別のイノベーションを生む。