社会運動(ムーブメント)の起こし方

 シリコンバレーや深圳では、これまでなかったような新しいビジネスが続々出てくるというのは本当だ。そしてそれは、「変わったことを思いつく」というアイデアが大事だ、と語られることが多い。

 実際は、アイデアと同じぐらい「そこに出資して、大きくなるために一緒に走る」人たちが重要だ。以下の、TEDで一番有名なプレゼンの一つ、「ムーブメントの起こし方」のように、最初にヘンな事を始めるリーダーがいたときに、そこに乗っかってくる数名が同じぐらい大事なのだ。次に数十名が乗ってきて、数百名が乗ってきて、気がつくと「みんながやっているから乗ってくる」人まで出てきてムーブメントになる。

TEDでもっとも有名なプレゼンの一つ「ムーブメントの起こし方」

 会社でいうと、変わったアイデアを持った人が始め、そこに最初にJoinするのが共同創業者だ。アイデアに他人を巻き込むのはむしろ2人目の人であることが多い。Appleなら、スティーブ・ウォズニアックがはじめたアイデアに最初にJoinしたのがジョブズだ。そして、「これを実現化するために、数カ月フルタイムで自分たちの時間を使いたいな」と思ったときに、その数カ月を買うためのお金を出す人たちが次の踊る人。今回紹介したアクセラレータたちだ。

 そんな「踊る人」たちがいてはじめて、「お!何か変わった面白いことがある。自分も参加しよう」というアーリーアダプターを引きつける。Kickstarterとかでお金を出すのはそういう人たちだろう。さらに成長すると「みんながやっているから自分もやろう」という人たちを引きつけ、社会全体を巻き込むことができる。参加してないことがむしろリスクになり、遅れていると馬鹿にされる。ムーブメントの誕生だ。

 シリコンバレーや深圳はそういう将来がわからない人に、最初の種銭を出資してくれる人が多いので、起業や新サービスの聖地になっている。

 投資モデルは「うまくいきそうなところに後から乗る」形から、「うまくいくかわからないものに少額の投資をたくさん行い、どれかが当たる」という形に変わりつつある。「選択と集中」とは真逆の方向性だ。

 特にハードウェアでは深圳独特のプロトタイプや小ロット生産を可能にするコストや知財の構造が、「小さいイノベーションをたくさん起こす」マスイノベーションを助けている。次回はその深圳独自のエコシステムを紹介する。