合議制にするとホームランが生まれない

 ただ、そうやって集団で投資しようとすると、例えば「役員会全員が承諾して出資」する際の決定権者はみんな60代だったりする。何十人もの60代がたいして長くもない会議でOKできそうなアイデアが、世界を驚かせる新ビジネスであることはない。たいていは「アメリカで流行っているから日本でも」「最近話題のXX」みたいな、流行りにのったものや今のビジネスの焼き直しだ。

 「間違いなく当たる」ものばかり探していると、今の流行りをあとから追いかけるものばかりになる。HAXなどのアクセラレータは違う。こういう投資集団は、なくなってもかまわないような少額の投資(数百万円とか)を、あまり前例のないビジネスに投資する。当然、見たことのないビジネスなので失敗の可能性が高いが、世の中に例がないものがうまく大ヒットしたら、見返りは大きい。

 中国の投資家がシリルやベンジャミンのように考えているかはわからないが、過熱気味の景気の中で深圳では目新しいサービスがどんどん走り出している。

深圳・南山区軟件産業基地のビル前にあるネームプレート。これだけ大量の投資会社が一つの場所に集まっている (写真提供:伊藤 亜聖)
深圳・南山区軟件産業基地のビル前にあるネームプレート。これだけ大量の投資会社が一つの場所に集まっている (写真提供:伊藤 亜聖)

 今のシリコンバレーや深圳には多くの「シードアクセラレータ」「エンジェル投資家」「インキュベータ」といわれる投資家たちがいる。この深圳の投資家ビルの写真でも「孵化器」「加速器」という名前がいくつも見つかる。「孵化器」はビジネスになる(起業する)段階まで行っていない面白いアイデアを一緒に考えてビジネスになる形まで助ける組織、加速器は立ち上げて大きくする段階をサポートする。

 たとえばAirBnbやDropboxといった日経BPの読者なら知っているであろうサービスは、どちらもシリコンバレーのYコンビネータというアクセラレータの出資を受けている。個別の投資の詳細は公表されていないが、立ち上げ時に対象会社の株式の5〜6%を受け取るのと引き換えに数百万円を出資するのがYコンビネータのよくある投資モデルで、まだ未上場とはいえ時価総額300億ドルとも1000億ドルとも言われるAirBnbにこの段階で投資できただけで、ほかの投資が何件コケても全部取り返しておつりが来るだろう。

中国のバッテリレンタルサービス。スマホでQRコードを読み取り、デポジットを払うと、モバイルバッテリを貸し出してくれる。同じ規格のレンタルステーションならどこで返しても良い

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