そんな中で、躍進したのが、AfDだった。「反難民」という明確な主張を掲げるAfDの存在は、皮肉なことに、今回の争点のない選挙の中では際立つことになった。

 特に、旧東ドイツ地域では難民問題と治安に不安を覚える国民の支持を増やしている。さらに、CDU・CSU支持者の中にも、難民の受け入れに寛容な左派色の強い姿勢に反発する保守層が、AfDに流れていると言われる。

 AfDのアリス・ウィーデル共同代表は、9月24日「何百万もの支持者が、我々が議会で建設的な野党としての役割を果たすことを期待している」と語った。

SPDから「ジャマイカ連立」へ

 目下のところ注目は、CDU・CSUがどのような連立政権を構築するかに集まっている。今回も、CDU・CSU単独では議席の過半数に達しないため、他党と連立を組む必要がある。

 事前に予想されていた連立政権は、4つのパターンだった。(1)再びSPDと連立政権を発足、(2)政策方針が近いFDP(自由民主党)との連立、(3)緑の党との連立、(4)FDP、緑の党との3政党による連立――。

 しかし、投票終了後、出口調査で惨敗が明らかになったSPDのシュルツ党首は「CDU・CSUとの連立はない」と連立参加を早々に否定した。この結果、CDU・CSU がFDP、緑の党との3党連立に動く機運が高まっている。

 前回の選挙で議席を獲得できなかったFDPは、今回10.5%の票を獲得し、議会での議席が復活する見込み。FDPは政策がCDU・CSUと近く、最も相性の良い相手とされていた。

 ただし、今回CDU・CSU自体が議席を減らす可能性が高いため、FDPとの連立だけでは過半数に達しない。このため、9.4%を獲得した緑の党を交えた3党での連立政権が取り沙汰されている。

 ドイツでは、3党それぞれのイメージカラーである黄色、黒、緑の組み合わせがジャマイカ国旗を彷彿させることから、「ジャマイカ連立」と呼んでいる。しかし、参加する政党が増えるほど連立政権の運営は難しくなるのが常。連立交渉は難航が予想されている。

 例えば、FDPとCDU・CSUは難民問題について管理を厳格化する方針。これに対して緑の党はより寛容姿勢を取る。EU統合に向けた方針についても、統合深化を進める考えは共通するが、各論になると微妙な価値観の違いがある。こうした相違について、3党でどこまで折り合えるかが、今後大きな注目を集めることになりそうだ。

 連立交渉の期限は定められていないが、最短でも1カ月はかかる見込み。しかし、EUでは難民問題や英国の離脱交渉など課題が山積している。メルケル首相はそれほど時間をかけるわけにはいかない。

 ほぼ無風と言われた今回の選挙。AfDが躍進したことで、かえって欧州が抱える難民問題が何一つ解決していないことを印象付ける結果となった。難民受け入れに寛容だったドイツが、今回の選挙結果を受けて難民受け入れに対する姿勢を変化させざるを得ず、EUの対応に影響を与える可能性がある。

 フランスでは、極右政党・国民戦線のマリーヌ・ルペン党首がAfDの躍進を喜び、ツイッターで賛辞のツイートを送った。反EU勢力が再び息を吹き返す可能性もある。

 そんな中で、欧州が統合に向けたプロセスをさらに進めるには、メルケル首相のリーダーシップが欠かせないだろう。ギリシャ危機、難民問題、ポピュリスト政党の台頭、頻発するテロ…。ここ数年、混乱が続いたEUが再び結束を強められるか。その試金石として、CDU・CSUがどのような連立政権を樹立するのかに、ドイツ国民だけでなく、欧州全体が注目している。

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