英国を訪れる外国人観光客への影響が懸念される

 メイ首相は4日朝に官邸前で演説し、「我々は新しいテロの脅威に直面している」と発言。英中部の都市マンチェスターで5月22日に起きたテロ事件との関連性については調査中としながらも、「テロがテロを呼ぶ状況が起きている」と説明した。

 テロ対策については「もはや、すべてがこれまで通り、というわけにはいかない」との見方を示し、過激派テロ組織や危険思想に対する取締まりを抜本的に見直し強化すると宣言した。

 しかし、頻発するテロは今後、英国経済にボディーブローのようにマイナスの影響を与える可能性が高い。真っ先に想定されるのは、冒頭の女性のように、観光を敬遠する動きだ。

訪英旅行者は記録的に高い水準だが

 昨年6月の国民投票後から続くポンド安を受けて、海外からの観光客が増え続けている。2016年に英国を訪れた外国人旅行者は約3760万人と記録的に高い水準となった。ロンドン中心部のショッピングストリートは今も、買い物目当ての観光客で溢れかえっている。旺盛な消費が小売売上高を押し上げ、堅調な英国経済を支える。

 今後もテロが続けば、観光客の動きに影響が出るのは避けられないだろう。それは、消費のエンジンを失うことを意味する。英オンライン旅行調査会社のフォワード・キーズによると、今年7月と8月の英国のホテル予約件数は、前年同期に比べて現時点で16%増加している。

 同社のオリビエ・ジェーガーCEO(最高経営責任者)は、「現時点で予約件数が減るかは明言できないが、英旅行予約に影響を及ぼす可能性はある」と言う。

 今後、EU(欧州連合)との離脱交渉に臨むメイ首相にとって、国内経済の維持は必須条件だ。国内経済が落ち込めば、離脱支持が下落し、政権は安定を失いかねない。離脱交渉に腰を据えて取り組むことが困難になる。

 6月8日に実施される予定の下院選挙では、野党第一党である労働党の支持率が急伸しており、メイ首相率いる与党・保守党は守勢に立たされている。圧勝すると見られていた当初の雰囲気は完全に消滅し、現在は650議席の過半を確保できない可能性が囁かれ初めている。

 テロのような国難は時に、国民に保守的な考えを促し、政権与党に有利に働くことがある。だが、今のところメイ首相に追い風とはなっていない。むしろ、メイ首相はテロ対策に追われ、思うような選挙運動ができていないのが実情だ。

 下院選挙まであと数日、選挙結果だけでなく、英国経済の長期的な動向にも影響を与えかねないテロの余波が、英国を揺さぶっている。