39歳の若きリーダーは、新しいフランスの時代を構築すると意気込む。しかし、その行く先には、危うさも潜んでいる。

 今回の決選投票では、急進左派や右派共和党などの支持者が相当数棄権したと見られている。仏メディアによる推定投票率は74%と、1969年以降で最も低い。いわば、今回の大統領選は、「反ルペン」でまとまった消去法の大統領選という見方もできる。

期待の高さは、落胆の大きさと裏腹

 反ルペンという目的が達成された今、マクロン氏は新たな結束の理由を見つけ出さなくてはならない。しかし、「右派でも左派でもない候補」として頭角を現したマクロン氏はそのバランスの取り方が難しい。

 英リーズ大学のジョシュリン・エバンス教授は次のように分析する。「親EU的な政策を性急に打ち出せば、ルペン支持層の反発を招く。しかし、彼らに配慮しすぎれば、肝心の経済再生が進まない。左派、右派のどちらでもないという『いいとこ取り』は、逆に何もできないリスクを孕んでいる」

 決選投票の直前に受けたサイバー攻撃も、今後、火種としてくすぶる可能性がある。漏洩したマクロン氏の情報は、「EMLEAKS」と呼ばれる匿名サイトに投稿されている。フランス政府は、選挙期間中に報じることを禁じたが、仏有力紙のルモンドは、「内容を精査し、報じるべき内容は事実の裏付けをとってから報じる」と発表。何かしらのスキャンダルが表面化する可能性は否定できない。

 最初の関門は、6月に控える議会選挙だろう。焦点となるのは、「マクロン大統領」が議会選挙で過半数を握れるかどうかになる。そのリスクについては、5月2日の記事『「マクロン大統領」の命運は6月の議会選が握る』で、ニース大学のギレス・イバルディ氏が指摘した通りだ。既存政党と連携するのか、自身の支持母体「En Marche!」から独自候補を擁立するのか。どちらにしても、決して楽な道のりではないことは確かだ。

 「マクロン政権の真価は、最初の半年で見えてくるだろう」と英リーズ大学のエバンス教授はいう。3年前まで、仏政界でほぼ無名の存在だったマクロン氏。国内外からの期待と不安の視線を浴びながら、大統領としての手腕を試されることになる。