第1回投票におけるマクロン候補とルペン候補の得票率は実質的に、数ポイントしか離れていません。「大統領選に勝ったも同然」というムードがフランス全土に広がれば、有権者の投票行動が変わる可能性も考えられます。懸念しているのは、「自分が投票に行かなくてもマクロンは勝つ」と考える人が増え、投票率が下がることです。確実に投票所に向かうであろう、ルペン支持票との差が詰まる可能性もあります。

ルペン候補が勝利する可能性はまだあるということでしょうか。

イバルディ:確率はとても低いと思いますが、その可能性を決して排除してはいけないと思います。

「マクロン大統領」の場合は、議会選挙が焦点に

 もっとも、マクロン候補が仮に大統領選に勝利したとしても、難題が山積しています。

 当面の最も大きな問題は、6月に控えるフランスの議会選挙になるでしょう。マクロン候補が仮に大統領になったとして、政策を実行していくには議会で主導権を握る必要があります。マクロン候補の支持母体である「En Marche!」は新興政党という存在にとどまり、議会に足場はありません。

 常識的に考えれば、En Marche!は既存政党と連立を組むことになるのでしょう。ただし、今のところマクロン候補は連立の可能性を明言していません。マクロン候補が社会党員だったこともあり、社会党と連立する可能性はあり得ますが、これは難しいとの見方もあります。

 マクロン候補は、既存政党を否定する新しい時代の政治を標榜しており、それが変化を渇望する国民の支持を得ている面があるからです。仮に大統領に就任した後に既存政党と連立するとなれば、国民の失望は避けられないでしょう。

 かといって、連立を組まずに、「En Marche!」が短期間の間に、フランス全土に候補を立てるのは非現実的です。

 マクロン候補は右派でも左派でもない新しい政治を掲げました。ですが、実際に政権を運営するためには、既存の政党とある程度連携することが避けられません。そのバランスの取り方を誤れば、たちまち自分の立場が窮地に陥るでしょう。

 連立であれ、自ら立ち上げた党であれ、マクロン候補を支持する政党が議会で多数を占めていなければ、議会運営は非常に苦しくなります。いくら素晴らしい公約を掲げていても、多数派政党のバックアップがなければ、何もできないでしょう。そうなれば、フランスの政治はまた数年、停滞することになりかねません。

 ですから、マクロン候補にとっては、決選投票での勝ち方がとても大切になると思います。どれだけ、世論の支持を広げ、ルペン候補と差をつけて勝つことができるかが注目です。マクロン候補にもう一段の勢いがつかなければ、「反ルペン」で結束している他の政党も、すぐにマクロン候補から離れていくと思います。

 マクロン候補、そしてフランスの未来は、決して安泰というわけではないのです。