親EU(欧州連合)を掲げるマクロン候補が首位で通過する見込みとなったことで、EU関係者にも安堵の声が広がっている。ドイツのアンゲラ・メルケル首相の報道官は「強いEUを維持するためにマクロン候補の首位通過は良いニュース」と語った。欧州委員会のユンケル委員長の報道官も、マクロン候補をたたえ、決選投票での勝利を期待した。

 現状の流れを鑑みれば、マクロン候補がこのまま決選投票でも勝利する可能性は高い。ただ、気がかりな点もある。20日にパリ中心部のシャンゼリゼ通りで起きたテロ事件だ。

テロが流れを変える可能性もある

 20日夜、男が警察官に向けて銃を発砲し、警察官1人を殺害するテロが起きた(犯人はその場で射殺された)。英BBCによると、過激派組織「イスラム国」(IS)が、自分たちの「戦闘員」による攻撃だと犯行声明を出しており、テロに対する国民の不安が再び高まっている。

 選挙期間中、テロに対して最も強硬な姿勢で対応すると宣言しているのがルペン候補だった。ルペン候補は、移民に対する寛容な姿勢がフランスをテロの脅威にさらしていると繰り返してきた。

 選挙公約では移民の受け入れを年1万人に制限するほか、治安維持のために警官・機動隊を1万5000人増員、さらに、国籍付与における出生地主義の廃止や、不法入国者への公的医療支援の廃止などを掲げている。

 「今回のテロは、ある面でフランス国民の治安維持への意識が呼び覚ました」。英リーズ大学のジョシュリン・エバンス政治学部教授はこう指摘する。今後、2週間で、大統領選の争点が移民問題へと広がれば、マクロン候補の圧倒的有利な状況が変化する可能性は否定できない。

 さらに問題は、マクロン候補が大統領に勝利したとしても、フランス経済再生への道のりが険しい点だ。産業育成、失業対策、労働改革など、フランスには長らく手がつけられなかった課題が山積している。マクロン候補が公約通りの結果を残すことができなければ、反ルペンでまとまった国民戦線以外の政党はすぐに離反する可能性が高い。

 フランスの大統領選ではしばしば、「1回目の投票は、自分が支持する候補に投票するが、決選投票は、大統領になってほしくない人を落とすために行動する」といわれる。果たしてその言葉通り、マクロン候補は決選投票に勝利できるだろうか。