町のあちこちに、ルペン候補のポスターが貼られていた
町のあちこちに、ルペン候補のポスターが貼られていた

 「社会党のことはもう信じていない」。フロランジュ市内にある数少ないピザレストランで働く30代の店員に大統領選について聞くと、こんな答えが帰ってきた。男性は、以前は鉄鋼関係の仕事をしていたが、今は定職に就いていない。

 「彼らは労働者の味方だと言って散々理想を語ったが、状況は何も良くなっていない」。男性はこう続けた。「ルペンの方が、よっぽどましだ。彼女にフランスを変えてもらいたい」。

「既存政党の候補は誰がなっても同じ」

 仏ニース大学で比較政治学を研究するギレス・イバルディ氏は、「高い失業率に苦しむ地域や、欧州統合が進む中で恩恵を受けていないと感じる地域では、社会党への失望を埋めるように、国民戦線が支持を広げている」と指摘する。

 国民戦線は、極右政党と紹介されているが、実際は左派の政策も取り込んでいる。低所得者や中小・零細企業への支援を充実させる政策を掲げており、社会党に不満を持つ国民の支持を吸収している。特に国民戦線の支持が広がっているのがフロランジュのような地域で、隣町のアヤンジュでは2014年、国民戦線に所属する町長が誕生した。

 現場を取材して特に感じたのが、国民が変化を渇望していることだ。

 「既存政党の候補は、誰が大統領になっても変わらない」とフロランジュに住む40代の女性は言う。「社会党と共和党以外なら誰でもいい。新しいリーダーでなければ、フランスは変わらない」。

ルペン候補とともに、無所属のマクロン候補や左翼党のメランション候補らが支持を高めているのは、多くの国民が既存の政党にノーを突きつけているからだろう。

 最新の世論調査によると、ルペン候補の支持率は24%でトップ。同じく、無所属のマクロン候補も24%で並ぶ。反ルペンの支持を固めた。ここに来て、左翼党のメランション氏も支持を急拡大させ、3位の座を共和党のフィヨン候補と争う展開になっている。

 今のところ、4月23日の第1回投票ではルペン候補とマクロン候補が勝ち残り、5月7日の決選投票でマクロン候補がルペン候補を破るとのシナリオが有力視されている。しかし、英国のEU離脱を巡る国民投票の前例もあり、「ルペン候補が勝つ可能性は捨てきれない」(英リーズ大学のジョシュリン・エバンス教授)と言う識者は少なくない。

 長らく2大政党が大統領の座を争ってきたフランスにとって、今回の大統領選は大きな転換点となり得るだろう。2017年前半、欧州政治で最も注目を集めるイベントがいよいよ始まる。

フランス大統領選
5年に一度実施される選挙で、今回は11人が立候補した。4月23日の第1回投票で有効投票の50%+1票以上を獲得した候補が当選する。「単記2回投票制」を採用しており、第1回投票で当選者が決まらない場合は、上位2人の間で決選投票を実施する。決選投票は、最も多い票を得た候補者が当選する。今回の投票日は5月7日。1965年以降、第1回投票で大統領が決定した例はない。