3月22日に起きた英議会襲撃事件は、ロンドンの観光産業に今後影響を与える可能性もある
3月22日に起きた英議会襲撃事件は、ロンドンの観光産業に今後影響を与える可能性もある

ロンドンから続々移転する企業

 英国政府には、企業がロンドンから逃避するのを阻止する方策も大きな課題としてのしかかる。

 「英国政府がEU単一市場へのアクセスを保障しない以上、ここに拠点を置き続けるのはリスクが高い」。現在、英国に欧州の営業拠点を置く日本メーカーの担当者は言う。

 同社は現在、スイスのチューリッヒ、オランダのアムステルダム、ドイツのフランクフルトなどを候補として選定を進めているという。日立製作所や日産自動車などは離脱後も残留する意向を示しているが、日本企業のロンドン離れは始まっている。

 既に、金融機関では、米ゴールドマンサックス、スイスのUBS、英HSBC、などが拠点の一部をEU加盟国に移転する計画を進めている。大和証券グループ本社がフランクフルトなどへの移転を検討していることも報道された。人材の募集も急激に減っている。人材会社のモーガン・マッキンリーによると、2017年2月の金融業界の求人は、前年同月比で17%下落。1月と比べると、23%下落した。

 ドイツ商工会議所のエリック・シュバイツァー会頭は、在英ドイツ企業の1割が投資を引き上げ、拠点も英国外に移転すると指摘した。

 ポンド安の恩恵を受けてきた景気にも、副作用が見え始めている。石油価格の上昇に伴って、パソコンやタブレット端末の価格が上昇。食料価格も上がっている。政府統計局(ONS)が3月21日に発表した2月の消費者物価指数(CPI)は前年同月比2.3%上昇と、2013年9月以来の高水準となった。

 英中央銀行のイングランド銀行は、これまでインフレ率が2%の目標を超過する状況を容認する姿勢を示してきた。しかし、急激な物価上昇が続けば、「実質所得の低下につながり、景気が悪化する可能性がある」(大和総研の菅野泰夫・ロンドンリサーチセンター長)。

 3月22日に起きた、議会での襲撃事件は、英経済を支える観光産業に不安を与えた。今回の事件は、過激派テロ組織の関与は薄いと指摘する向きがあるものの、旅行会社のオンライン予約などを調査しているフォワードキーズのオリビア・ジャガーCEO(最高経営責任者)は、「旅行の予約に今後影響が出てくる可能性がある」と懸念する。

 メイ首相は議会の演説で、「英国は、もはや引き返せないところにまで来た」と語った。交渉が今後どう展開していくかは、誰も分からない。不安を抱えたまま、期限2年のカウントダウンが始まった。