英国がEUに離脱を通知した当日も、英国会近くでは離脱に反対する集団の姿があった。
英国がEUに離脱を通知した当日も、英国会近くでは離脱に反対する集団の姿があった。

 離脱を通知する4日前の3月25日。

 ロンドン都心部では、英国のEU離脱に反対する大規模なデモ行進に、数万人が参加した。参加者の中には、英元副首相のニック・クレッグ氏や、トニー・ブレア首相(当時)の報道官を務めたアラスター・キャンベル氏などの顔もあった。クレッグ元副首相は「メイ首相は英国経済を危機に陥れようとしている」と英国政府を改めて批難した。

 「離脱を支持した人々も、それがいかに愚かな考えだったかを認識し始めている。英国がEUに戻るために、残留派は結束しなければならない」。マンチェスターから参加した30代の若者は、こう語った。「EUと共に繁栄したいと考える人間が、英国には多くいることを示したい」と、ロンドン近郊から参加した20代の女性は言う。英国がEU離脱に向かう中で、その将来を憂慮する声は根強い。

スコットランドは再び住民投票を求める

 2014年に英国からの独立を目指したスコットランドも、再び揺れている。

 「2度目の住民投票を実施したい」。スコットランド議会は3月28日、英国からの離脱の可否を問う住民投票の実施を英国議会と交渉する法案を、賛成多数で可決した。これは、スコットランド民族党のニコラ・スタージョン党首が3月13日に行なった演説を受けて提案されたものだ。同氏は、独立を巡る住民投票を2018年の秋から2019年の秋に向けて実施したいと表明した。

 メイ首相は、スコットランドの独立について、「今はその時ではない。スコットランドも含め、英国全体にとって最良の離脱条件を得るために団結すべきだ」と述べ、再実施に否定的な考えを示している。3月27日にはスコットランドを訪れ、スタージョン党首に連合王国の結束を訴えたが、分裂の火種は広がるばかりだ。

 連合王国を形成する北アイルランドでも、反英国政府の動きが広がっている。3月4日に実施された北アイルランド議会選挙では、英国政府による統治を支持する民主統一党(DUP)が1921年以来、初めて過半数を割り込んだ。

 一方で、アイルランドとの統一を求めるシン・フェイン党が躍進し、DUPとの議席差を1に縮めた。シン・フェイン党は、統一を巡る住民投票をすると主張している。北アイルランドでも、連合王国である英国に残留するのか、アイルランドと一体化するのかという、帰属問題が再び表面化する可能性がある。

 さらに、EU離脱を受け、ウェールズでも英連合王国からの独立を目指す動きが活発化するなど遠心力が高まっている。メイ首相にとって、EU離脱交渉と並行して、国内の求心力をどう高めるかも大きな課題になる。

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