
選挙戦の終盤に勃発したトルコ問題が、結果的に与党の窮地を救う形になった。
3月15日に実施されたオランダ下院選挙は、比例代表制の下、定数150議席を28の政党が争った。午後9時に投票が締め切られた。オランダ国民の関心は高く、投票率は82%と前回選挙の65%を大幅に上回った。現地時間の15日深夜に大勢が判明した。
オランダメディアなどによる出口調査の結果は、与党の自由民主国民党(VVD)が33議席を獲得して第1党の座を守る見込み。注目を集めた極右政党の自由党(PVV)は20議席を獲得する。キリスト教民主勢力(CDA)と民主66(D66)が19議席でこれに続く。正式な開票結果は3月21日に発表される予定だ。
自由民主国民党は、事前の世論調査では苦戦が予想されていた。議席数を前回の41から減らしたものの、第1党の座を守り抜いた。同党を率いるマルク・ルッテ首相は15日深夜に「オランダ国民は間違ったポピュリズムに対して明確にノーと言った」と勝利宣言。ドイツのアンゲラ・メルケル首相や欧州委員会のジャンクロード・ユンケル委員長らもルッテ首相の勝利を祝福した。
一方の自由党。第1党になれば、欧州全土で台頭する極右勢力に勢いを与えるところだったが、選挙戦終盤で勢いを失った。世論調査では昨年から支持率トップを快走してきたが、3月に入って失速。自由民主国民党に世論調査の支持率で抜かれることもあった。
トルコ外相の入国拒否が流れを変える
自由党のヘルト・ウィルダース党首は出口調査の結果が判明した後、「議席を増やしたことは我々にとって勝利だ!」(前回選挙の獲得議席は15)とツイッターに短く投稿した。しかし、予想(2月26日時点は29)に比べると、議席数が伸び悩んだのは明らか。
なぜ自由党は失速したのか。「土壇場になって、極右政党に政権を任せることに有権者が懐疑的になった」「国民はルッテ首相の経済政策を評価した」など、地元メディアは様々な分析をしているが、最も有力な理由として考えられているのが、選挙の終盤に起きたトルコとの一件だ。
オランダは3月11日、トルコのチャプシオール外相らの入国を拒否した。同外相はロッテルダムで開かれる政治集会に出席するはずだった。トルコでは4月、大統領権限を強化する改憲の是非を問う国民投票が予定されている。改憲への賛成をオランダに住むトルコ有権者に呼びかける目的だった。
オランダ政府は「治安と秩序を保てない」ことを入国拒否の理由として説明したが、トルコのエルドアン大統領はこの対応に猛反発。「オランダはファシストの国」と強く批判した。
両国の関係は現在も緊張状態が続いており、外交問題に発展しつつある。この動きは当初、反移民を掲げる自由党に追い風になるとの見方が強かったが、蓋を開ければ、この対応がルッテ首相の支持を急伸させる結果になった。
国民の多くが、ルッテ首相がトルコに対して厳格に対応したことを支持。「ルッテ首相が国民に強いリーダーシップを見せる格好の場面になった」とオランダのライデン大学のハンス・ボラード助教授は言う。
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