不動産、国内旅行が好調に

 一方、国民投票の焦点のひとつだった移民問題だが、ブレグジットにより、移民に対するヘイトクライムも増加しているようだ。

 内務省の統計によると、イングランドとウェールズの警察で記録された人種・宗教絡みの差別事件は、2016年7月だけで5486件に上り、2015年の3886件と比較して41%も増加したという。国民投票の3日後、6月26日には、西ロンドンにあるポーランド移民団体のオフィスに人種差別的内容のイタズラ書きをされたほか、ケンブリッジシャーにある学校でも『EUから離脱しろ、ポーランドの害虫はもういらない』という落書きをされる被害にあったと伝えられている。

 もっとも、ブレグジットの影響は暗い話ばかりではない。英国民統計局によると、2016年6月から8月の失業率は前年同時期の5.4%から4.9%に減少、雇用率は74.5%と前年同時期の数字をキープし、就業者総数はおよそ3200万人になったという。そのほか、8月に購入された住宅総数は10万630件と今年頭からわずかに増加、不動産価格は8月から9月にかけて0.3%上昇するなど、ブレグジットに関わらず、英国の労働市場や住宅市場は好調を続けていることが示された。

 変わったところでは、アイルランドのパスポートを申請する数が劇的に増加したというニュースもあった。英国では二重国籍が認められており、アイルランド生まれの英国人、または両親か祖父母のどちらかがアイルランド人である英国人は、アイルランドのパスポートが取得できる。隣国ということもあって、アイルランド系の英国人は多い。ブレグジットの後も欧州連合の恩恵を受け続けたい英国人にとっては、今のうちにアイルランドの国籍を取っておこうというわけだ。

 また、ブレグジットの影響でポンド安になって海外旅行を見送る人が増加したためか、国内旅行業界は活況を呈したとも伝えられている。

 英国で生活している者としては、今のところ普段の生活にあまり大きな変化はないというのが正直な実感だ。しかし、当初の予定通り、2017年3月末までに欧州連合の離脱通告が本当に行われるのかどうか依然として明らかではなく、それがどのような影響を与えるかどうかは不透明のままだ。

(文/名取由恵)

日経トレンディネット 2016年11月28日付の記事を転載]