「英語力ゼロで米国人社長の報告担当に」(金田博之氏)

 金田博之氏は、「発音度外視英語」実践者の1人。英語に関する学習書を読んだことは一度もないというが、徹底的にやることを絞った独自の学習法を確立し、書籍まで出版している。

 金田氏が徹底したこと。それは「得意ジャンルを絞る」こと。業務に関係する英語だけは覚え、それ以外には一切手をつけなかったという。

金田博之氏。1975年山口県生まれ。大学卒業後、SAPジャパンに入社。29歳で副社長補佐、30歳で部長に着任、35歳で本部長に昇格するなど、グローバル企業の第一線で活動。現在は、日本の大手製造業でグローバル新規事業に携わる。『アジアの非ネイティブに学ぶビジネス英語速習術』(日経BP)など、これまで8冊の書籍を出版

【ポイント1】業務に関係のある言葉以外は覚えない

 外資系大手ソフトウエア会社SAPの日本法人に新卒で入社した金田さん。配属先は国内向けのマーケティングを行う部署で、英語とは無縁の会社員生活を送っていた。しかし、29歳のときに副社長補佐に抜てきされたことで、状況が一変する。

 「営業を総括する副社長は多忙で不在がち。そのため、私が副社長の代理として、米国人の社長に数字の予測を説明するという定例業務が発生したんです。でも、実は英語が全然話せなくて」

 学生時代はESSに所属し、ディベートや英語劇を経験してきた金田氏。回りからは当然のように英語が話せると思われていたという。

 突然英語が必要になった金田さんが最初に覚えた単語。それはまさに「予測する」という意味の「forecast」だった。報告の場で、多用する単語はほかにもあった。forecastする内容は「revenue」、つまり売り上げについて。そうやって、金田さんは業務で必要な英単語を一つひとつ確認していった。

 「報告する数字を間違うととんでもないことになる。だからまず、スクリプトを日本語で書いてから英訳し、通常業務が終わったあとに、夜中の2時、3時くらいまでかけて丸暗記しました」

 翻訳や暗記に当てる作業時間が短いので、集中して覚えることができた、と金田氏。さらに報告作業を毎回繰り返すことで、質問のセリフや業界用語など出てくる単語がパターン化されていることに気づき、単語やイディオムを増やしていった。しかし、いくら営業予測に特化した報告会といえども、専門外の質問が飛んでくることはなかったのだろうか。

 「そういうときの返し方も丸暗記です。『これは僕が答えられる内容ではないので、後日副社長に確認してから報告します』と。逃げのトークも必ず準備しておきました」

 営業予測に関する話に特化していえば、業務に取りかかって3カ月ほどで反射的に会話できるようになったという。