クレイモデルを使わなかったのはゲーム内の架空の車だけ

 東京モーターショー2017で、インダストリアルクレイなどの製造・販売を手掛けるトゥールズインターナショナルがユニークな試みをしていた。インダストリアルクレイを使ったカーモデルの制作のワークショップだ。プロのカーモデラーの指導の下、作業台のわきに掲示されたデザイン画をベースに、カーモデルに興味のある学生たちが1/5のスケールモデルを作成していた。

ワークショップでお手本として使われていたデザイン画。ロングノーズのショートデッキ、テールのボリューム感に特徴のあるスポーティーな1台
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赤い自動車のデザイン画から起こしたクレイモデル。プロのカーモデラーから指導を受けつつ、カーデザインに興味を持つ学生たちが、クレイモデルを仕上げる
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ボンネットからサイドパネル、ルーフ、そしてテールへと滑らかに連なる曲線的な上面と、攻撃的な印象を抱かせるノーズ。対極となるイメージが1台に同居したデザイン
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銀色の自動車のデザイン画を見て学生たちが作っているクレイモデル。デザイン画よりもボンネットとフェンダーがそれぞれにきちんと主張するようなアレンジが加わっているようだ。フォーミュラーカーをイメージしているようにも見える
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 話を聞いてみると、自動車メーカーによる実際のデザイン工程でも、全く同じことが行われるのだそうだ。主な行程は6つ。(1)デザイナーがデザイン画を描く、(2)デザイン画を見てクレイで1/5サイズのスケールモデルを作る、(3)コンペでデザインを絞り込む、(4)実車サイズのクレイモデルを制作、(5)完成したクレイモデルを3Dでスキャンし、設計図を起こす、(6)実車を試作する。メーカーによって工程に細かな違いはあるが、基本的にはどのメーカーもこのような流れで自動車をデザインしていくという。

 「クレイモデルが作られず、いきなり設計図を描いて実車を作ることはないのか?」と質問してみたところ、過去に『Forza Motorsport』というゲームに登場した架空の自動車を、ゲーム中のモデルから実車化した例があり、それがクレイモデルを作らずに実車が作られたおそらく唯一の例だという。

 「デザイナーの感性を取り込める点が、CADにないクレイモデル最大の利点」だそうだ。

 古くはCAD、最近では3Dプリンターなど、車の製造プロセスにも新しい技術が常に取り入れられている。いずれはAIも進出するかもしれない。ただ、自動車というものが実用性だけでなく、趣味性も求められる存在であり続ける限り、クレイモデル制作は自動車のデザインに不可欠なのかもしれない。

会場の一角にはワークショップとは別に、来場者が自由に削ったり盛ったりできるクレイモデルも置かれていた
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(文/稲垣宗彦)

日経トレンディネット 2017年11月17日付の記事を転載]