若者はこのシュワ映画を見るべし!

――今10代、20代の人たちに、シュワルツェネッガー入門編として、「この3作だけでも見たほうがいい!」とおすすめするなら何でしょうか。

てらさわ: まずはやっぱり『コマンドー』。無心で見てほしい。ネットで読んだこととか、おじさんたちがゴチャゴチャ言っていることを1回全部忘れて、虚心に『コマンドー』を見てほしい。

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――そこはやっぱり入門編として外せないだろうと。『コマンドー』が面白い!となったら次は何ですかね。

てらさわ: やっぱり外れがないところで、『プレデター』(87年)も見てもらって。

「プレデター <特別編>」(ブルーレイ発売中、1905円、 20世紀フォックス ホーム エンターテイメント)。(C)2018 Twentieth Century Fox Home Entertainment LLC. All Rights Reserved.
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――今年、新作も公開されたSFホラー映画ですね。この辺は順手ですね。

てらさわ: 順手。まずはそこ。ただ、そうは言っても、「ちゃんと真面目に見るように!」という。半笑いじゃなくて、真面目に見ようということですね。ここまで見たら、次はいきなり応用編にいってもいいでしょう。

――何ですか?

てらさわ: 『バトルランナー』(87年)!

――シュワルツェネッガーが近未来の全体主義国家で「ランニング・マン」とい う殺人ゲームに参加する映画ですね。公開当時はマンガチックすぎる設定 と演出が失笑されましたが、今では特異な世界観が再評価されて、カル ト作品になっています。この3本立て、劇場で見たいですね!

てらさわ: ですよね。とにかく1986年から1990年ぐらいのいわゆる「シュワルツェネッガー全盛期』と勝手に僕が言っている時代の作品はみんな見たほうがいいと思いますね。『レッドブル』(88年)とか。

――シュワルツェネッガー演じるソ連の刑事がシカゴで大暴れする『レッドブ ル』! 確かに面白い作品だらけですね。

てらさわ: なので、作品については皆さんにお任せするので、1986年から5年間の作品をまずは見てくれと。

――『シュワルツェネッガー主義』を編集された田野辺さんにもお聞きしますが、今回の本の内容は結果としてどう思われましたか。

田野辺: 当初は『ラスト・アクション・ヒーロー』を褒めろと言ったんですよ。てらさわさんが書いた内容に反論できなかったので、今の形になっていますけど、当初は褒めてくれと。

――どんなポイントを褒めてくれと?

田野辺: メタ映画の先駆けでしたから。ちょうど『レディ・プレイヤー1』の製作が開始されたニュースもあったので新しい視点で語ることもできるだろうと。

――そう考えると、ストーリーがない『コマンドー』だったり、メタ構造を持つ『ラスト・アクション・ヒーロー』だったり、本当に時代に先駆けた映画をシュワルツェネッガーはたくさん作っていますよね。

てらさわ: そうなんです。しかも「新しいことを俺がやった!」とはあまり言わないんですよ。「今はやっているアレ、実は俺が先にやっていた」みたいなことをもうちょっと言ってもいいのにと思うんですけど、全然言わない。そのせいかどうか、シュワルツェネッガーは映画史的な文脈から、すごく隔絶というか、孤絶しているんですよ。

――映画史的に位置付けることは可能なのに、誰もしてこなかったんですね。

てらさわ: 外側からちょっとでも映画評論的な解釈をしようとすると、全部シュワルツェネッガーという巨大な存在に押し流されちゃうんです。何にでもカレーかけちゃうみたいな。

――確かにカレ―のような力がありますね。「○○料理のカレー風味ですって言 うけど、それつまりカレーだろ?」と。すごく知的なSF映画だけど、でもシュワルツェネッガーじゃん! ということですよね。

てらさわ: でもうまい。自分に嘘はつけないじゃないですか。「カレーなんて嫌いだ」とは言えないから。釈然としないけど、うまいという(笑)。今日何か食ったな、と何となく満足して家に帰るという。

――シュワルツェネッガー=カレー説。これは当たっていますね。何にしても、かけてしまった瞬間に、カレー=シュワルツェネッガーになってしまう……そんな結論でいいんでしょうか(笑)。

てらさわ: 大丈夫かな(笑)。

――シュワルツェネッガーはまだ現役なわけですから、てらさわさんもまだま だ追いかけていきますよね?

てらさわ: そうですね。生きている限りは。ここまで来た以上は追いかけていか なきゃいけないと思います。

――シュワルツェネッガーという人はてらさわさんの人生にどんな影響を与えた人なんでしょうか。

てらさわ: 映画の見方というものが変わったというか、変えられたかもしれないですよね。映画は少なくとも葛藤すればいいのかとか、どんでん返しがあればいいのかとか、そういう価値基準というのは持たなくなりました。もっと違うところで、映画を楽しむようになってしまったというところかもしれません。そんな強大な影響力を持つ人です。

(聞き手・構成/稲垣哲也)

[ 日経トレンディネット 2018年10月18日付の記事を転載]