エヴァと縄文土偶の共通項

 1万年以上前に生まれた土偶と、現代のアニメに共通点を見いだす人もいる。縄文時代の考古学を専門の一つとし、2012年のMIHO MUSEUM(滋賀県甲賀市)「土偶・コスモス展」ではキュレーションも行った、立命館大学立命館グローバル・イノベーション研究機構の中村大(おおき)助教だ。

立命館大学立命館グローバル・イノベーション研究機構の中村大助教。現代美術アーティストたちと協働で「縄文茶会」などのイベントや展示で、考古学を現代文化の創造につなげる活動もしている
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 中村助教は、「縄文土器よりも縄文土偶のほうが人気がある」という。「展示に来た人は『表情が面白い』『腰から脚にかけての表現がすごく洗練されている』など、人体表現に対する感想の方が多かった」(中村助教)。

「土偶 縄文のビーナス」(茅野市尖石縄文考古館蔵、写真提供/山岡監督)
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 その理由として、中村助教は「日本人は感情移入ができるヒトガタに引かれるのでは。ヒトガタのもつ『かたちのチカラ』がある」と話す。

 また、人間は何か目に見えない力や存在を表現するとき、ヒトガタを選ぶことはよくあるのではないか、と指摘する。

 「目に見えないものを他者に伝えイメージを共有するため、具体的な属性を与えるということはこれまでもあった。座敷わらしが、年齢も性別も人によってブレがあるのはそのせい。縄文土偶も性別不詳のものが多く具象化が重要ではなかった」(中村助教)

「土偶 縄文の女神」(山形県立博物館蔵、写真提供/山岡監督)
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 エヴァンゲリオンがヒトガタであらねばならなかった理由も同じだという。「人類を救うという特別な存在は、機能性だけを考えれば人の形である必要はない。ただヒトガタで表現したことで感情移入ができてヒットした。時代や文化で違うだけで、人間の普遍的な思考のメカニズムが共通している」(中村助教)。

 さらに中村助教は、土器や土偶のデザインの「アソビやすさ」が現在の人気につながっているともみている。中村助教によると90年代後半から2000年代初めにかけても国内外で縄文文化が注目されたという。09年の「国宝 土偶展」も、英・大英博物館で同年に開催され好評を博した「THE POWER OF DOGU」の帰国展だった。

 「国内では三内丸山遺跡(青森県)が2000年に新たに国の特別史跡に指定され、当時の景気の落ち込みから自分たちを奮い立たせるため、縄文の“すごさ”にスポットライトが当てられた。海外ではEUの歴史的拡大期でアイデンティティーを求めてローカルな文化が注目され、その流れのなかで日本独特の縄文文化がフィーチャーされた。とにかく“超絶技巧のすごさ”が取り上げられた」(中村助教)

三内丸山遺跡(写真提供/山岡監督)
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 だが、現在の縄文人気は技巧ではなく、デザインに着目する人が多いという。「今も先行き不透明さゆえ若者が安定志向になり、冒険心を失い、社会には閉塞感が漂うが、“すごさ”ではなくデザインを使ったポップカルチャーでの“遊び”が活発になっている」(中村助教)という。

吉田カバンが2015年に期間限定で販売した「縄文ポシェット」。縄文時代に使用された採集した木の実などを入れる針葉樹の樹皮を編んだ袋状の「縄文ポシェット」を、よみがえらせたようなデザイン。現在購入できるのは、表参道店で期間限定で販売される「縄文ポシェットスペシャルエディション」(10万円)のみ
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 「新しいものを探したら数千年前の縄文にあった、という感じ。縄文には意外とモダンなものが多いのかもしれない」(中村助教)