“かわいい”“面白い”“どこにでも”

 2009年には「国宝 土偶展」が開催され10万人以上が訪れた。「多くの方々がご来館いただいたことによって、縄文の造形に対する潜在的な関心の高さを感じました。そこで特別展『縄文』では土偶だけではなく、縄文の造形を広く対象として、『縄文の美』をテーマに企画しました」。品川氏は、今回の開催の意図をこう説明する。

 縄文展人気の余波は、時期を同じくして公開されたドキュメンタリー映画『縄文にハマる人々』(7月7日公開、山岡信貴監督)にも及んだ。東京・渋谷の映画館イメージフォーラム単館で4週間上映される予定だったが、すでに全国の27館での上映が決まり、今後さらに増える予定だ。仙台では1日限りの3D上映もした。じわじわと人気が広がっている。

 山岡監督は、「縄文展がなければ4週間で(上映が)終わっていただろう。縄文人気については、2014年に譽田(こんだ)亜紀子氏が『はじめての土偶』を出版し、2015年にフリーペーパー『縄文ZINE』が発行され、縄文がライトな文脈で紹介されたことで若い層にも浸透しはじめた」と言う。

山岡信貴監督。初監督作品「PICKLED PUNK」(1993年)がベルリン国際映画祭などで招待上映される。『縄文にハマる人々』は、「ソラノ」「死なない子供、荒川修作」に続くドキュメンタリー
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『縄文にハマる人々』では、いとうせいこう氏など縄文にまつわる26人に話を聞いた。全国53カ所の土器や土偶が登場する
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 品川氏も縄文展のヒットの理由として、「縄文が『かわいい』や『面白い』といった視点で紹介されることでより身近な存在となり、全国各地に縄文時代の遺跡があるという間口の広さも重なり、多くの方に関心をもっていただけたのだと考えています」と分析する。

 「はじめての土偶」は初心者に向けて縄文土偶を紹介した書籍で、土偶のかわいさやキッチュさという新たなイメージを広めた。

 縄文文化は、土器や土偶、身に着ける装飾品やポシェットなど立体的なものばかりで、絵画のような2次元のものは圧倒的に少ないとされている。

 「もしエネルギーに陰陽があるとすれば、土偶から漂うものは陰ではなく陽のエネルギーだと感じる。自らの身に降りかかる理不尽なことを納得するため、見えない存在をよりどころとしていたら、それを表す土偶に負の念を込めることはないはず。今見る人が、“かわいい”“すごい”と素直にエネルギーを受け取ることが、一番縄文時代に生きた人々に近づけるのでは」(譽田氏)

『はじめての土偶』著者の譽田亜紀子氏。「元祖縄文女子」として執筆やメディア活動を通じて縄文文化を広めている。「土器や土偶は土に埋まっている1つの歴史で、国民の宝。先端だけを追い求めると学問が淘汰される。未来の考古学者をつくりたくて活動している」
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