シュワルツェネッガーの特異点『トータル・リコール』
――著書の中で、1990年公開のSF超大作『トータル・リコール』は特異点だと書かれています。地球で暮らしていた平凡な男(シュワルツェネッガー)が実は記憶をなくした火星を解放するレジスタンスだったというお話ですが、てらさわさんの中でどういった位置付けなんですか。
てらさわ: 見れば見るほど変な映画で。『トータル・リコール』には物語はありますよ。だけどそれが一体どこに進むのか、よく分からない。SFアクション超大作なのに変なことをしている、と思いました。
――エンタメ映画なら「宝物を見つける」とか、主人公に目的が必ずあるわけですよね。
てらさわ: そう。ゴールが分からないんですよ。多分それは最初から設定して作っていなかったせいだと思うんですけど。実際どう終わるか、ぎりぎりまで誰も考えてなかったという話なので。
――あんな超大作なのに?
てらさわ: やっぱりシュワルツェネッガー本人には作家性はないんですけど、わりと個性の強い監督をちゃんと捕まえてきて、「好きにやってくれ」という人なので、それが影響していると思います。
――『トータル・リコール』は監督がポール・バーホーベン(『ロボコップ』『スターシップ・トゥルーパーズ』などを監督)ですもんね。すごいタッグですね、今考えると。
てらさわ: だからそれがあの1回きりになってしまったのは本当に残念です。
――僕もあれ、中学生のときに見て、確かに最初は面白いんですけど、最後のほうはだんだんモヤっとしてくるというか、「これで良かったんだっけ?」みたいな。
てらさわ: そうなんですよね。何の話だったのと聞かれると、「えっと……」となるじゃないですか。よくそんなことをやったなと思う。
――シュワルツェネッガーは役者なのに、映画に出るだけで作家性がにじみ出 てしまうのでしょうか。
てらさわ: と思うんですよね。ただプロデューサーが持ってきた脚本に、「何だ、これ?」とか思いながらも、わりとまじめに仕事を全うしていたりするので、この人のエゴの方向性がよく分からないというのもあります。
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