晃之: そうですね。実在感を高めるには、見えない部分も重要だと思います。

三宅: 動きもそう。人間って身体感覚を大事にしていて、ただ座っているときも、自分の体を確認するように無意識に細かな動きをしています。朝、目を開けて最初にするのもそれ。生物のそうした無意識のしぐさがないと、AIは人間らしくなりません。だから僕は今、AIの専門書より動物園や街の雑踏を参考にしています。生物の無意識の動きを観察できるから。

晃之: Sayaに関して、僕らも少し似たアプローチをしています。ハイフレームレートカメラで撮影された動画を見ると、虹彩などは目を動かすたびにぷるぷる動いているように見えたりします。実際に意識して見て取れるわけではありませんが、そういった細部を感じ取って、人間を人間だと察知するのではないでしょうか。Sayaは虹彩の動きまでは反映していませんが、微細な動きは取り入れています。こうして細かい情報を付与することの積み重ねが、さらなる実在感を与えることにつながると思っています。

三宅: つくづく、Sayaは瞳の力が強いですね。人間って、自分を見てくれる、理解してくれる、覚えてくれる相手に愛着を持つものです。

友香: 私たちも、Sayaが人を癒やせる存在になれるといいなと思っています。かわいいって、それだけで癒やされるようなところがありますよね。人々の心の隙間を埋める存在として、Sayaのような存在が活躍できる可能性を感じます。パーソナルスペースにすぐに他人を入れるのはハードルが高いけれど、作られた存在(CGやAI)なら裏切ることもないので安心だという感覚もあるのではないでしょうか。

三宅: CGとAIの融合が進み、Sayaが限りなく人間に近い存在になる頃には、誰もがパーソナルなパートナー(AIを組み込んだキャラクター)を連れて歩くようになるでしょう。ユーザーの好みや行動パターンを学習し、さまざまなサポートをしてくれるはず。その次に、みんなが自分のアバターを持ち、アバター同士でコミュニケーションを取る時代が来ると思います。

「エンタメ+AI」で日本に勝機

三宅: 日本の競争力という意味合いでも、CGとAIを融合して仮想世界にキャラクターを生み出す分野には期待が持てそうです。日本人は命のないものに命を与えるのがうまいですから。欧米では膨大な量のデータを取って、完璧な(人間の)再現を目指すのが主流になると思いますが、僕らはもっとアーティスティックにやれると思います。

友香: キャラクターに命を感じてめでることができる民族ですもんね。そういう意味で、日本が一番、強みを出せるのがこの領域かもしれません。

三宅: エンタメ以外のAIは欧米が先行していますが、機械に人間の知能を丸ごとまねさせようという西洋流のAIは、いずれ行き詰まるはずです。そのときは、自然の中から浮かび上がってくるような、より生物的なAIを日本から提案していかないといけない。ゲームやエンタメの分野で、先述のように身体性を加えながらAIを育てていくことが必要になると思います。その土壌は日本にしかないので、Sayaが世界を驚かせたように、また必ず世界を驚かせることができるはずです。

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(日経トレンディ編集部)

日経トレンディネット 2017年10月20日付の記事を転載]