三宅: 肌を表現するのに、レイヤーをいくつも重ねていますよね。メラニン色素や汗腺、毛穴、潤い、反射……。
友香: 素肌も多数のレイヤーで表現しており、生々しい表現までだいぶ近づいてきています。ただ、一般に公開する本番用の肌は、女性の肌への理想を意識してナチュラルメークで整えた表現をしています。
三宅: Sayaのように、現実の中にぽんと置かれたCGの女の子がリアリティーを持つことって、すごいことだと思います。映画やゲームのように、背景やストーリーの補完があるわけではないですし。
友香: 生きている背景が想像しやすいキャラクターなんでしょうか。SayaにAIを組み込んでほしい、話をしたいという要望を多くいただきます。
三宅: Sayaに釣り合うAIとなると大変ですね。ここまでリアルなキャラクターには、「ここまでの知性があるはず」と期待が高まりますから。僕から見ると、AIの技術はまだまだ。CGのほうがかなり先を行っていると感じます。人間の脳って神経細胞(ニューロン)が1000億個超あるといわれるけれど、今、ディープラーニングでシミュレーションできているのは、たかだか数千程度のレベル。僕がやっているゲーム用AIはさらにその下で、レベルがあまりに違います。
AIから世界はどう見えるか
三宅: SayaにAIを入れるなら、身体性が重要になってくるでしょうね。自分の体をどう感じているか。簡易的なものはFF 15のAIにも取り入れています。例えば、モンスターが腕を振り下ろしたときにその攻撃がどこまで届くのか、影響の及ぶ範囲を開発段階でAIに認識させます。赤ちゃんがするみたいに、単純な動きをくり返すなかで自分の運動が及ぶ範囲を、AIは理解していくんですね。
Sayaが10代の女の子だとすると、特有の身体感覚があるだろうし、それが決まると世界の見え方も変わってきます。喉が渇いているか、暑いと感じているか、周りに嫌いな人がいるか、そういうことと世界の見え方はリンクしている。だから、Sayaを人間に近づけようと思ったら、内臓や筋肉をCGで作る必要はないけれど、生体情報をパラメーターとして備えるべきだと思います。呼吸をしたり、何かを食べたり、生き物はそういうことで世界と強く結び付いていますから。
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