森岡さんが築き上げたノウハウを、他の企業に移植するということでしょうか?
森岡:その通りです。1月の退社後にUSJでの経験を生かす道を考え抜いた結果です。どこかの企業に移籍すればまたそこの仕事しかできませんが、この会社を設立することで同時に複数の案件に携われます。
ある意味USJは、私にとって壮大な実験場でした。USJを劇的によみがえらせた原動力は、個人のマーケティングスキルの強化などの「個人技」と、需要予測のノウハウ、意思決定や人事評価制度、マスタープランの策定、組織の構造など、人の行動を一定の好ましい方向に向かわせてパフォーマンスを高める「システム」との掛け算により、全社を消費者目線で連動させたことです。こうした取り組みが会社を救うことを証明したと自負しています。
そして任天堂と共同で開発する新エリアを2020年の東京五輪前にオープンできるメドが立ったのを機に、新たな旅に出ることを決意しました。USJでの自分のミッションを完遂したと判断したからです。私がいなくてもUSJのシステムは変わることなく動き続けており、今年度も同等もしくは前年を上回る好業績で着地するとみています。
USJの経営再生でも、どうしても必要な能力を備えた人材を外から獲得して体制を整えるのにかなりの時間を要しました。新しい会社では最初から一流のチームを編成しています。よりスピーディーに、そしてより完璧な形で問題を解決できるでしょう。
企業再生の見通しをつけるのに必要な3年間は、マーケティング手法を学ばせる“教育期間”ということですか?
森岡:成長する企業に必要なのは、マーケティングの知識だけではありません。マーケティングに基づいて戦略を立て、それを実現可能にする組織づくりが不可欠です。つまり、マーケティング能力と、戦略的に組織を構築できる「戦略人事能力」が一対になって初めて、企業は再生できるのです。
マーケティング能力と戦略人事能力。そのどちらかだけを提供できる組織は他にもあるかもしれません。しかし両方を同時に提供できる会社は、我々以外には見当たりません。
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