2016年9月、日本航空(JAL)の成田-上海(浦東)線に、人気キャラクター「ドラえもん」を描いたB767-300型(JA610J)の特別塗装機「JAL ドラえもんJET」(以下、ドラえもんジェット)が就航した。
JALの国際線で特別塗装機が就航するのは珍しい。2017年3月末まで運航予定で、この特別塗装機1機を含め、すべての中国線(香港線を除く)の機内でドラえもん仕様の紙コップによるドリンクサービスと、オリジナルポストカードを提供する。12月からは中国語版のドラえもん映画の機内放映も行う。
成田=上海(浦東)線に就航した「JAL ドラえもんJET」
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ドラえもんは縦4.6m×横5.9mのデカールを貼り付けたもの。左右どちらの側面も同じ塗装になっている
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香港線を除くすべての中国線の機内で、ドラえもん仕様の紙コップによるドリンクサービスが提供される
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手前にあるポストカードも提供
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就航に先立つ8月には、キャンペーンの中国語版ウェブサイトを開設した。中国在住者(香港を除く)を対象にしたプレゼントキャンペーンや、上海市内でJALの座席の体験イベントを行うなど、中国でのプロモーションを強化して日本‐中国路線の活性化につなげたい意向だ。JALがここまで中国路線に力を入れるのには理由がある。
なぜ中国線に「ドラえもん」?
ドラえもんは日本だけでなく世界で人気があり、特に中国では年齢層を問わず絶大な人気があるという。9月21日に行われたお披露目会見は、集まった報道関係者の約半数が中国の報道陣で、その人気ぶりがうかがえた。
お披露目会見では、中国語と日本語のパネルが掲げられた。中国からも大勢の報道陣が取材に訪れていた
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現在、訪日外国人で一番多いのは中国人だ。2015年の訪日中国人は約499万人で前年比207%と大幅に増加。訪中日本人は約250万人で前年比92%と減少している。訪日中国人が訪中日本人を大きく上回る状況だ。
訪日客による爆買い需要は収まったと見られるが、訪日需要は今後も増加が見込まれる。日本と中国を結ぶ航空路線は年間約10万便で前年比約140%と増加している。羽田と中国3大都市(上海・北京・広州)間の路線だけでなく、地方路線も大幅に増加している。
JALの中国路線の搭乗者数も伸びている。ただ搭乗率を見ると2015年は76%で前年比105%の伸びにとどまり、訪日需要全体の伸びに比べると物足りない数字だ。
JALではこの理由を、JALの良さ、例えば「おもてなしの心」や「安心感」といった部分が十分に理解されていないからではないかと分析している。そこでまずは搭乗してもらえるようにと、中国でも大人気のドラえもんを起用したキャンペーンを展開することにしたわけだ。
お披露目会見で登壇したJALの植木義晴社長は「中国の方にもっと日本航空を認知していただきたい。ドラえもんと一緒にそのきっかけをつくりたい。最高の商品、最高のサービスという日本のおもてなしの心を味わってほしい」と狙いを述べた。
飛行機は「どこでもドア」
ドラえもんジェットの機体前方に描かれているのは、タケコプターで飛ぶ巨大なドラえもんの姿だ。縦4.6m×横5.9mのデカールを貼り付けたもので、間近で見るとかなりの迫力だ。これまでのドラえもんジェットは機体後部にドラえもんと登場キャラクターたちが描かれていたが、今回は機体前方に巨大なドラえもんのみを配置したデザインになっている。
描かれているキャラクターは空を飛ぶドラえもんのみ
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すっきりとしたデザインで、飛行すればドラえもんが飛んでいるかのように見えそうだ
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機体後部には東京スカイツリーやレインボーブリッジといった東京の観光名所が描かれていて、後部ドアはドラえもんのひみつ道具「どこでもドア」になっている。飛行機がどこでもドアになって、日本と中国を結ぶというわけだ。植木社長も「これまでいろんな特別塗装機を造ってきたが、その中でも一番の出来だと思っている」と自信を見せた。
機体後部には東京の町並みが描かれている
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ドアは「どこでもドア」になっている。ここをくぐって日本や中国に行こうというわけだ
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登壇した藤子・F・不二雄プロの伊藤善章社長は「藤子・F・不二雄先生は飛行機が大好きだった。この飛行機を見たら『僕も乗りたい!』と言うに違いない」と語った。
お披露目会見にはドラえもんも登場。一緒に記念撮影する中国報道陣も多く、中国での人気の高さが実感できた
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「JAL ドラえもんJET」の運航は2017年3月末までだが、利用者の反応を見てその後もドラえもんとのコラボレーションを展開する可能性もあるという。JALはドラえもんと一緒にどれだけ日本‐中国路線の搭乗客を増やせるのか。
(文/湯浅英夫=IT・家電ジャーナリスト 編集/日経トレンディネット)
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