決定が1分遅れると100万円の損失

 不安の中で始まったミッドナイト競輪が軌道に乗ったのは、ネット特化で21時以降という公営競技未開拓の時間帯とファン層を切り開いたからだけではない。ネットでの車券販売に合わせてレースの運営改善も進めてきたことも大きな要因だ。

 「競輪は着順決定が1分遅れれば売り上げが100万円減る傾向にあります。短時間で開催するミッドナイト競輪では、着順決定のスピードアップが不可欠でした」とJKAの小倉競輪運営事務局の武藤秀彰事務局長は言う。

着順決定を担う審判員室。秒単位の改善を積み重ねて着順決定の迅速化を進め、車券購入時間の短いミッドナイト競輪をより買いやすいものにした
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 競輪は選手がゴールすると、審判が着順を決定して当選者への払戻金が決まる。観客は自分の車券がいくら的中したか、それとも外れたかをもとに、次のレースへの賭け方を考える。観客が考える時間をより多く確保するためには、迅速な着順決定と払戻金確定が必要だ。

 しかしミッドナイト競輪は昼間より短時間で開催するため、もともとレース間隔が短い。またネット経由での車券販売は通信の遅延に備えるために、競輪場での車券販売より3~4分早く締め切られる。ネットでの販売に100%依存するミッドナイト競輪では特に影響が大きい。

 着順決定と払戻金確定の迅速化は従来からどの競輪場も行ってきたが、小倉競輪場はミッドナイト競輪開催にあたってさらに「秒単位」の短縮に取り組んだ。ミスが許されないために何重もの確認作業をとっていた着順決定のフローを、一つひとつほぐしてチェックし、省略しても影響がないか、作業を複線化できるところはないかなどを検証。選手発走前のファンファーレまで短縮するなど、まるで工場の作業改善のような細かい時間短縮を重ね、観客が車券を買いやすい環境を作っていった。

 そのほかにも、初心者が車券的中の楽しさを実感しやすいように、オッズは低くても当たりやすい番組(選手の組み合わせ)を構成したり、「ニコ生(ニコニコ生放送)」での中継など娯楽要素をレース中継に盛り込んだりなど、新規のファンが入りやすいレースを企画。開催時間以外にもさまざまな工夫を施したことが、ミッドナイト競輪の成功の要因になっているのだ。