「iPhone 7」の登場が話題になったが、実は「iPhone 7」の発売日と同じ2016年9月7日(米国時間)に「Apple Watch」にも待望の新モデルが登場している。タイミングが重なったためにちょっと目立たないのだが、今回は、その魅力を徹底的にチェックしていく。
個人的に高く評価しているのは、デザインがほとんど変わらなかったことだ。もともとアップルは、製品のデザインを頻繁には変えない傾向がある。「Mac」はほぼ同様のデザインを数年維持しているし、「iPhone」もおおよそ2年はデザインが変わらない。他社と違ってボディーに大きなコストを掛ける代わりに、デザインを頻繁に変更しないというのがポリシーなのだろう。ユーザーにとっては、手に入れた製品が短期間で古めかしくならないというメリットがある。
ちなみに、Apple Watchの新モデルは2種類。初代モデル同様のボディーにデュアルコアプロセッサーを搭載したのが「Apple Watch Series 1」で、さまざまな新機能を盛り込んだのが「Apple Watch Series 2」だ。もちろん、今回は後者を評価する。
新登場の「Apple Watch Series 2」
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背面の造形も旧モデルとほとんど変わらない
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分厚くなって防水性能を備えた
Apple Watch Series 2は、パッと見では旧モデルと変わらないのだが、実は本体サイズが変更されている。下記のスペックを見ると分かるが、1mmほど厚くなっているのだ。それぞれ単体で手に持っても違いは分からないが、2つを持ち比べてみると確かに違う。Apple Watch Series 2は、ちょっところっとした印象を受けるだろう。たった1mmほどでも、およそ1割に当たるので違いが感じられるのだ。
■Apple Watch Series 1
42.5×36.4×10.5mm、38.6×33.3×10.5mm
■Apple Watch Series 2
42.5×36.4×11.4mm、38.6×33.3×11.4mm
ボディーで最も進化したのは、水深50mの耐水性能を搭載したことだ。以前は防沫性能だったので、小雨に当たる程度なら問題ないが、水中では利用できなかった。Apple Watch Series 2ならば、着けたままプールに入ることも可能だ。
Apple Watchは、内部に入った水を、スピーカーを鳴らすことで排出する仕組みを備えている。この機能があるために、初代モデルとはメニューが変わっているのがなかなか興味深い。排水を実行すると「プープー」という音が何度か鳴る。これだけで水が排出されるのだから不思議だ。
Apple Watchの主な用途がスポーツだという人は少なくないだろう。Apple Watch Series 2のコンセプトも、よりスポーツに寄っている。そう考えると、耐水性能はとてもうれしい。僕はよく釣りに行くのだが、そんなときにも浸水を気にせず使えるようになった。手を洗うときも肘くらいまでジャブジャブと洗えるわけだ。
背面の刻印を見ると「Series 2」と書かれている
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旧モデル(右)と比べても違いはほとんど分からないだろう
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写真では分かりにくいが、厚みが1mmほど増している。下が旧モデル
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バンドは新旧共通で利用可能だ
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耐水機能のコマンドが追加されているのが、旧モデルとの違い。スピーカーを振動させて水を排出する仕組みを持っている
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GPS内蔵でスポーツウォッチの進化形に
ガーミンなどの本格的なランニングウォッチは本体にGPSを内蔵しているが、旧Apple WatchはiPhoneのGPSを利用する仕様だったため、iPhoneを持ち歩かないと正確なデータが取れなかった。しかし、Apple Watch Series 2は本体にGPSを内蔵し、iPhoneと一緒に持ち歩かなくても距離の測定やルートの記録ができるようになった。これは、荷物を減らしたいランナーにとっては非常にありがたい。
ただし、GPS内蔵によって気になるポイントもある。まず、バッテリーの消耗だ。スマートフォンでさえGPSを使い続けると電池が激しく減るので、バッテリー容量の小さいスマートウォッチではかなり厳しそうだ。ところが、スペックを見ると駆動時間はGPSを内蔵しない旧モデルと同じになっており、試しに2時間近く走ってみたが、100%だったバッテリーは85%までしか減らなかった。走ったのは朝8時ごろで、その後も夜まで問題なく使い続けることができたので、バッテリー駆動時間は合格と言えるだろう。
もう1つがGPSの精度だ。こちらは思ったよりも良く、幅が10m程度しかないサイクリングコースの折り返しもきっちり取得できた。本格的なスポーツウォッチとしても問題なく使えると思う。
Apple Watchだけを持って走ってみた。小さくて見づらいが、時計の横にiPhoneとつながっていないマークが表示されている
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自宅に戻ってからルートをiPhoneで表示したが、完璧な位置情報を持っている。走っているペースの上下も分かる
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運動する人にはおすすめだ
Apple Watch Series 2を利用すると運動するのが楽しくなる。iPhoneを持ち歩かなくても正確なデータが取得できるのはとても助かる。まだサービスが開始されていないが、Suicaへの対応もアナウンスされている。Apple Watchだけを身に着けてジョギングし、コンビニに立ち寄ってドリンクを買うこともできるわけだ。
正確な位置情報を取るなら、ほかのスポーツウオッチでも十分に役目を果たしてくれる。しかし、メールや電話の着信をプッシュで教えてくれたり、さまざまなアプリと連携して、仕事中にも便利に使えるのはApple Watchだけだ。さらに、財布代わりに使えるとなれば、もはやApple Watchの独壇場だろう。
防水性能とGPSは、スポーツを軸に据えると必須の機能だけに、最高に進化したと断言できる。また、違いが分かりにくいのだが、今回ディスプレーがより明るく進化している。
GPS内蔵とApple Pay対応で他社のスマートウォッチを確実に周回遅れにしたApple Watch Series 2は、よくスポーツをする人には迷わずおすすめできる。CPUが高速化し、動きもキビキビとして快適に使えるようになった。僕も購入を予定している。
残念なのがあまりにもスポーツやアクティビティーに注力しすぎていることだ。なんだかんだ言っても、運動をしている時間は1日の中でそれほど多くないのだから、ビジネスに役立つ機能も充実させてほしかった。GPSを仕事での移動に役立てられるようなアプリの登場を待ちたいところだ。
ディスプレーは2倍も明るくなっているとのことだが、旧モデル(右)と比べてもそれほど違いは分からない
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暗い部屋で見ると左のApple Watch Series 2のほうが明るいことが分かる
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筆者/戸田 覚(とだ・さとる)
1963年生まれのビジネス書作家。著書は120冊以上に上る。パソコンなどのデジタル製品にも造詣が深く、多数の連載記事も持つ。ユーザー視点の辛口評価が好評。近著に、『一流のプロから学ぶ ビジネスに効くExcelテクニック』(朝日新聞出版)がある。
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