シトロエンの今後と日本での戦略は

 シトロエンは、2014年に発表したC4カクタスというモデルから、イメージの刷新を図るべく、大きなデザイン改革を行ってきた。日本ではC4カクタスは限定導入にとどまったため、「C3」が初代の本格的な新世代デザイン車となる。シトロエン自体は、長らく日本でも販売されているブランドだが、多くの人にとってはあまりなじみはないだろう。来日したシトロエンのマーケティング部長のアルノー・ベローニ氏にシトロエンの今後と日本での戦略を聞いた。

――シトロエンブランドの立ち位置と今後の商品展開について教えてほしい。

ベローニ氏: シトロエンは、ポピュラーなブランド。装備を見てもらえれば分かるが、多くのドライビングサポート機能を備えながら、お得感のある価格帯となっている。もちろん、フランスブランドであることはしっかりと主張していくし、日本ではフランスらしいものが受け入れられることも理解している。

 ブランドスローガンに「シトロエン・アドバンスト・コンフォート」を掲げ、“ストレスの除去”“より心地よい車内体験”“シームレスな利用”“精神的負担の軽減”を図るクルマ作りをしている。

 将来的な話ではあるが、既存のファンにも喜ばれるような「C5」や「C6」の後継にあたるモデルも2020年以降に発売する予定だ。もちろん、単にトラディショナルなスタイルではなく、今のモダンなスタイルを融合させた新モデルとなる。

シトロエンのマーケティング部長のアルノー・ベローニ氏
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――日本市場をどう分析するか?

ベローニ氏: 日本市場は最も洗練された市場だ。その理由は2つある。強固な基盤があり、専門性が高いこと。もうひとつは、輸入車にはあまり優しくない、閉じられた市場であることだ。そのため、ユーザーの輸入車への要求は、国産車より厳しくなる傾向がある。われわれとしては、最上級のクルマを提供しないといけないと考えている。

――日本での戦略は?

ベローニ氏: 日本での戦略は大きく3つ。ひとつは、販売店での体験を徹底すること。現在進めている新たなショールーム「ラ・メゾン・シトロエン」を浸透させる。

 2つ目は、商品ラインアップだ。昨年導入した「C3」は、大変好評だ。これは世界的な傾向で、2016年11月の発売以来、40万台以上を売り上げている。MPV(ミニバン)のC4ピカソも好調だ。さらなるプラスアルファを生み出すべく、来年には2台の新型車を投入予定で、日本への導入も検討している。コンパクトな「C3エアクロス」とシトロエンとしては大きめとなる「C5エアクロス」というモデルで、どちらも都市型SUVタイプで話題性は高いと思う。

 3つ目は、日本の顧客と信頼関係を構築すること。そのツールとして、ディーラーや商品を評価する「シトロエン・アドバイザー」を導入した。公式サイトで、顧客に店舗や商品について採点をしてもらい、ポイント化して表示する。新規顧客に、クルマの情報だけでなく、ユーザーのコメントや評価も見てもらうシステムだ。ディーラー評価は、いくつかの店舗でテスト導入の段階で、今後全国へ展開していく。旅行するとき、旅行情報サイトの口コミをチェックするような感覚だ。

ディーラーや商品を評価する「シトロエン・アドバイザー」。顧客に店舗や商品について採点をしてもらい、ポイント化して表示する
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――フォードなど販売台数が少ないブランドが撤退するケースがある。シトロエンの日本での販売シェアは少ないが、将来的に、縮小や撤退などの心配はないか?

ベローニ氏: まずは安心してほしい。シトロエンは非常に強固なブランドであり、世界で年間120万台以上を販売している。今年上半期の世界販売は、前年比9%増の成長を見せている。中国に至っては前年比50%増以上にもなる。日本でも、上半期だけで前年比33%増という好成績だ。指摘されたようなイメージを払しょくするには、とにかく新車を出し続けていくことに限ると思う。また先ほども述べたように、販売店を増加させることもこれからの課題だ。今後も積極的に取り組んでいく方針で、東京モーターショーへの出展も続ける。日本から撤退するという考えは全くない。

――日本の消費者には、シトロエンのどのような点に注目してほしいか?

ベローニ氏: まずはデザイン。パーソナライズが可能な点やコンフォートであること。そしてフランスならではのカジュアルシックさを体感してほしい。パワートレインも効率の良いものとなっている。そして忘れてならないのが、シトロエンの歴史だ。約100年もの長きにわたり、独自のクルマ作りを行ってきたバックボーンについて知ってもらいたい。

◇ ◇ ◇

   シトロエンの日本での価格帯は、200万~400万円台と輸入車としては買いやすい。ただこれまで日本では、少数の熱心なファンを中心としたニッチなブランドであった。

 新デザインのC3の好調は、そんなシトロエンのイメージを大きく変える可能性を秘めている。個性的なデザインと鮮やかな外装色、お洒落な内装とフランス車らしい世界観が凝縮されており、価格も総額で300万円以内に収められるのも魅力的だ。シトロエンを知らない人にとっては、WEBサイトの「シトロエン・アドバイザー」が、良いヒントとなりそうだ。

 唯一気になる点は、販売店舗数の少なさだ。地域によってはディーラーまでの距離で購入を断念する人もいるはずだ。ただベローニ氏は、販売店の強化もアピールしており、今後に期待したい。近い将来にSUVラインアップも加わりそうなので、身近な輸入車の選択のひとつとして、日本でシトロエンの存在に注目する人が増えるかもしれない。

(文/大音安弘)

[ 日経トレンディネット 2018年8月31日付の記事を転載]