レーダーと予測技術の向上で精度をアップ

 このようなナウキャストの技術は、この10年で大きく飛躍したそうだ。実は、ナウキャストのシステムが最初に導入されたのは2004年、当時は「降水ナウキャスト」という名前だった。これを改良したものが、2014年から導入された高解像度ナウキャストというわけだ。両者を比較すると、雨の強いエリアと弱いエリアがより細かく解析、予測できるようになったことが分かる。

降水ナウキャストと高解像度降水ナウキャストを比較すると、エリアごとの雨の強弱がより詳細に表現されている。画像は気象庁のウェブサイトから
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 精度が向上した背景には、「ドップラーレーダーの観測能力と共に、予測技術の向上がある」と西嶋氏は言う。レーダーの精度が向上し、より正確に雲の中の水滴の状況を捉えられるようになったことはもちろん大きい。ただ、レーダーの電波は気温によって飛び方が変わったり、障害物にぶつかったり大気の状況で不必要に反射したりして正確に状況を示せないこともある。また、実際の雨や雲は風の影響を受け、刻々と変化する。観測で得られたデータを解析する際に、これらのさまざまな要因を想定し、精度の高い予測に近づけるのは予測技術。気象庁の予報士たちが自らの知見を基に日々の観測データに向き合い、ナウキャストのアルゴリズムを修正しながら、予測の確度と緻密性を上げてきた。「集まったデータを処理できるコンピューター技術が進歩したのも大きい」(西嶋氏)。

 高解像度ナウキャストによって、ゲリラ豪雨のような突然の激しい雨が予測できるようになったことは、災害対策に大きなプラスだ。地下街などが浸水に備えたり、洪水が起こりやすい河川で止水板を設置したりしやすくなった。「河川の近くでは、自分のいる場所は晴れていても上流で強い雨が降ることで洪水が起こりやすくなる。高解像度降水ナウキャストをチェックすることで、危険をいち早く回避できる」(西嶋氏)。ゲリラ豪雨は通常の天気予報のようにあらかじめ予報できないからこそ、緻密な“ナウキャスト”が真価を発揮するといえるだろう。

(文/平野亜矢=日経トレンディネット