気象庁と国交省の“合わせ技”で予測

 高解像度降水ナウキャストでの予測に使われているのは、気象庁と国土交通省がそれぞれ持つドップラーレーダーと、「アメダス」をはじめとした地上気象観測システム、「ラジオゾンデ」や「ウィンドプロファイラ」といわれる高層気象観測システムで集められる観測データだ。

 ドップラーレーダーとは、アンテナを回転させながら空に向かって電波を発射し、雨や雪の状況を観測するためのもの。電波は雲の中の水滴(雨や雪の素)にぶつかると反射されて戻ってくる。戻ってくる電波が多ければ、水滴をたくさん含んだ雨雲なので、降水確率は高い。また、戻ってくるまでの時間や周波数の変化から、雨雲までの距離や進行方向なども予測できる。

 気象庁だけでなく、国土交通省のレーダーも利用しているのは、「それぞれが使う電波の種類と特性が違うから」と西嶋氏。気象庁のレーダーが使うCバンドは、波長が長いため、遠方までざっくり観測するのに向く。気象庁では北海道から沖縄まで全国をカバーするのが役目のため、電波が250m間隔のマスの網の目になるように、このCバンドレーダーを全国20カ所に設置している。一方、国土交通省のレーダーが使っているのは、Cバンドよりも波長が短いXバンドで、狭い範囲しか届かない半面、細かな観測に向いている。国土交通省は、同じく250mマスの網の目になるように、Xバンドレーダーを北海道および本州の主要エリア39カ所設置している。両者を組み合わせることで、いいとこ取りの観察網が出来上がるというわけだ。

国交省も「XRAIN」という名で降水情報観測システムを構築。ウェブサイトで情報を発信している
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 国土交通省など、ほかの組織のシステムと連携しているのは、地上の気象観測システムも同じだ。気象庁のアメダスだけでは全国約1300地点しかカバーできない。そこで、国土交通省と自治体が持つ雨量計を組み合わせることで、全国1万地点の観測が可能になるそうだ。

 さらに、気球を飛ばして地上から高度約30kmまでの気圧や気温、湿度などの状況を観測するラジオゾンデ、電波を使って上空の風向きや風速を観測するウィンドプロファイラの観測データも総合し、現在の雨雲の状況を詳細に捉える。こうして得た観測データを元に、「現在から30分後までは250mマス、35~60分後までは1kmマスごとに解析し、5分間隔で予測を更新しています」(西嶋氏)。