相撲や美術館のガイドシステムにも展開

 AR鑑賞システムの設計を担当した大日本印刷、ウエアラブルデバイスを開発したソニーも、幅広い活用を考えているようだ。例えば、相撲のようなスポーツへの展開。「日本語が分からない外国人に相撲の決まり手などを解説できる」(大日本印刷ABセンターマーケティング本部市場開拓ユニットITビジネス開発部の近藤孝夫氏)。現状の無線LANを使ったシステムでは、20~30のデバイスしか同時接続ができないなどの課題があるため、通信方式などが課題になりそうだ。また、スマートフォンやタブレットなど、手元の端末と1対1でつなぎ、美術館のイヤホンガイドを置き換えるなどの用途も想定している。

 「せっかくのARなのだから、画面下に字幕を出すだけでなく、人から吹き出しが出るなど、より自由なレイアウトはできないのか」とも聞いてみた。ウエアラブルデバイスを開発したソニーセミコンダクタソリューションズ新規事業部門SIG事業室ソフトウェアマネジャーの岩津健氏によると、顔認識技術などを使えば実現自体は可能だそうだ。「ただ、システムの負荷が高くなったりメガネが重くなったりする」とのこと。どんな機能をどこまで盛り込むか。実用化に向けての検討課題はまだ残る。

 それだけに、「実証実験は継続していきたい」と宝生氏。まずは、定期的に行っている公演に取り入れるのが目標だ。「最初はウエアラブル目当てでもいい。より多くの観客に能を見てもらうきっかけにしたい」(宝生氏)。収容人数500人程度の能楽堂は、新しい技術を試す企業にとってもいい実証実験の場なのだという。だからこそ、企業とも積極的に協力して「能楽自体に新たなイノベーションを起こしたい」。二十代続く能の名門の若き宗家は、涼やかに笑いながらそう意気込みを語った。

かつては任天堂の3Dゲーム機「バーチャルボーイ」で遊んだり、最近も恋愛シミュレーションゲーム『ラブプラス』を楽しんだり、元々、デジタル分野に強いと宝生氏。ソニーのウエアラブルデバイスを選んだのも、「性能や使い勝手はもちろん、見た目がスタイリッシュだったことが大きい」という(撮影:シバタススム)
かつては任天堂の3Dゲーム機「バーチャルボーイ」で遊んだり、最近も恋愛シミュレーションゲーム『ラブプラス』を楽しんだり、元々、デジタル分野に強いと宝生氏。ソニーのウエアラブルデバイスを選んだのも、「性能や使い勝手はもちろん、見た目がスタイリッシュだったことが大きい」という(撮影:シバタススム)
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(文/平野亜矢=日経トレンディネット

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