また、アルファ碁で話題になった「機械学習」も取り入れている。Bonanzaの開発者である保木邦仁氏は当時、将棋の知識が乏しく、自分でソフトを強くすることができなかったため、コンピューターにプロ棋士の棋譜を学習させて指し手の善しあしを判定させられる機械学習を採用したというが、この機械学習は将棋ソフトの強さを飛躍的に伸ばした。

 全幅検索と機械学習によって、最善手を自ら検出するようになった将棋ソフトは、それまでの“人間的な”感覚では選択されなかった手も“機械的に”指してくる。将棋は居飛車党、振り飛車党、急戦志向、持久戦志向、攻め将棋、受け将棋といった棋風が反映されるものだが、将棋ソフトにはそういった偏りがない。大川氏が「棋士の中には将棋ソフトを嫌いと言い切る人もいる」というのは道理かもしれない。

 その一方で、「将棋ソフトが強くなると、研究に利用する棋士も増えていった。その結果、盤上ががらっと変わった」と大川氏。コンピュータが選択した指し手が本当に最善かどうかは分からないが、プロ棋士すら、いやプロ棋士だからこそ選択しなかった指し手が次々と生み出され、プロ棋士同士の対局の盤上に再現されるようになったのだ。

将棋ソフトの歴史
1975年5月 早稲田大学の瀧澤武信教授(現コンピュータ将棋協会会長)をメーンプログラマーとするプロジェクトチームが、世界で最初のコンピュータ将棋を開発
1985年8月 ファミコンソフト「本将棋 内藤九段将棋秘伝」(セタ)発売
1987年4月 ファミコンソフト「森田将棋」(セタ)発売。日本将棋連盟は総合棋力2級と認定
1990年12月 第1回コンピュータ将棋選手権開催。将棋ソフト「永世名人」が優勝
2005年6月 将棋ソフト「激指」が第18回アマチュア竜王戦で全国大会決勝トーナメントに進出
2005年9月 将棋ソフト「TACOS」が橋本崇載五段と対局。橋本五段が勝利
2005年10月 将棋ソフト「YSS(商品名:AI将棋)」が森内俊之名人と角落ちで対局。森内名人が勝利
2007年3月 将棋ソフト「Bonanza」と渡辺明竜王が公開対局。渡辺竜王が勝利
2008年5月 将棋ソフト「激指」(マイナビ)が清水上徹アマ名人に勝利
2010年10月 合議システムを採用した将棋ソフト「あから2010」が清水市代女流王将に勝利
2012年2月 将棋ソフト「ボンクラーズ」が米長邦雄永世棋聖に勝利
2013年3~4月 第2回将棋電王戦(現在の電王戦の前身。人間とAIが5対5で戦う団体戦)で、将棋ソフトが3勝1敗1分けの勝ち越し
2014年3~4月 第3回将棋電王戦で、将棋ソフトが4勝1敗で勝ち越し
2015年3~4月 将棋電王戦FINALでプロ棋士が3勝2敗で勝ち越し
2016年4~5月 1対1の戦いとなった第1期電王戦で、将棋ソフト「Ponanza」が山崎隆之叡王に2連勝