業務レベルの本格派、ダイエットトレーナー コア
家庭用フィットネスマシンの魅力は、何と言ってもその手軽さだ。ランニングマシン、エアロバイク、ステッパーなど、さまざまなフィットネスマシンがあるが、最近の人気は低周波で筋肉を刺激するEMS(Electrical Muscle Stimulation)タイプと、機器の振動を利用する振動タイプ。両タイプの特徴は、体に装着するだけだったり、機器の上に乗るだけだったりと、特別な運動を必要としない点にある。
振動マシンの現在の売れ筋は5万円前後の製品だが、スポーツジムなどにある本格的な振動マシンは100万円以上するのが当たり前。そこで注目したいのが、業務用レベルの機能を備えつつ家庭用に開発された振動マシンだ。
2018年7月2日に発売された「ダイエットトレーナー コア DT-C1000」は、医療用マッサージチェアで定評のある健康器具メーカー、フジ医療器の次世代型トレーニング&コンディショニングマシン。独自開発した「音波振動(ソニックバイブレーション)」を調節することで、体の部位ごとに筋肉を鍛えたり、ほぐしたりできるという。
フジ医療器の「ダイエットトレーナー コア DT-C1000」。ポージングアシストバーを含めた本体サイズは幅約67.5×奥行き約83.5×高さ約136.0cmとけっこうな存在感で、重量も約55kgとかなり重い。実売価格は30万円弱(8月6日現在)と、業務用に比べればかなり安いものの、家庭用としてはかなり攻めている
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筋肉をほぐす「コンディショニング」なら、マシンに乗って全身の力を抜くだけでOK。筋肉を鍛える「トレーニング」のときは、その部分に力を入れると効果的とのこと
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家庭用振動マシンとの違いは振動回数と揺れ
フジ医療器の大出健太郎氏によると、最新の業務用振動マシンと一般的に販売されている家庭用振動マシンとの最大の違いは、振動回数と揺れにあるとのこと。家庭用振動マシンが15Hz(1秒間に振動する回数)前後で振動するのに対し、業務用のほとんどは30Hz以上だ。ちなみにDT-C1000は、振動回数を3.0Hzから60.0Hzまで0.1Hz単位で調節することが可能で、振動強度(ステップが上下する幅)も99段階となっている。このあたりの設定の細かさも業務用レベルと言っていい。
ポージングアシストバーは、設定用のタッチパネル液晶を搭載。振動回数、振動強度は手動でも設定できる
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さらに、振動を発生させる動きにも特徴があると大出氏。家庭用振動マシンはステップ板をシーソーのように揺らし、その揺れに逆らってユーザーが踏ん張ることで筋肉に刺激を与える。だが、その揺れが原因で“酔う”ユーザーも多く、筋力が落ちてきたシニア世代には関節などに負担がかかりすぎることもあるらしい。一方、上下振動が特徴であるDT-C1000はマシン酔いが起こりにくく、関節などへの負担も小さいという。
フジ医療器 マッサージ機器事業部 マッサージ機企画担当ユニット長の大出健太郎氏。30kg以上の人を検知しないと動作しないようにする加重センサーや人感センサーなど、安全設計にもこだわっているとのこと
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筆者は家電ライターという職業柄、いくつもの家庭用振動マシンを体験してきたが、DT-C1000の振動は、それらとは全く別物だと感じた。興味深いのは、振動数を上げれば上げるほど、振動を感じにくくなること。最大の60Hzでは、軽くしびれるような感覚はあるものの「これ、本当に動いてるの?」と思うほどだった。動作音も振動数が上がるほど静かになるので、利用しながらテレビを見たり、音楽を聴いたりもできそうだ。
振動回数で無駄な肉を狙い撃ち
振動回数を選択できるメリットは2つある。1つは、振動させる部位を狙い撃ちできること。個人差はあるが、例えばふくらはぎや足を振動させたい場合は30.0~42.9Hz、太ももやお尻なら8.6~12.5Hz、胸や腹なら5.6~8.5Hz、首なら12.6~29.9Hzの振動回数を選択する。実際、手動で振動回数を変化させると、振動する体の部位が変わっていくのが分かる。
もう1つのメリットは振動させる筋肉の“深度”が変わることで、5.5Hz以下なら筋肉の浅い部分に作用し、43.0Hz以上では筋肉の深い部分に作用するという。そこで、DT-C1000では目的別に最適な振動回数を選べるよう、以下の4つのモードを用意している。
・全身をソフトに刺激することで軽い運動効果を与える「エクササイズ」モード
・体幹部を刺激して全身の筋肉をほぐし、リラックス効果を与える「体幹」モード
・おなか、太ももなど、特定の体の部位を集中的に刺激する「ダイエット」モード
・筋トレ中に全身をハードに刺激して運動効率を上げる「トレーニング」モード
「自動コース」として4つのモードを用意。モードと時間を選択して「スタート」をタップするだけでOK
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大阪体育大学で身体運動中の神経・筋機能メカニクスについて研究している石川昌紀教授による実験では、37Hzの振動を与えた状態でV字腹筋をしたところ、筋活動量が2倍以上になったという。つまり、DT-C1000の上で腹筋を10回すれば、20回分以上の効果が期待できることになる。短時間で効果が上がるのは、忙しい現代人にとってうれしいポイントだろう。
また、本体上部にあるポージングアシストバーは、さまざまなポーズをとるために配置されたもの。このバーをつかんで体を支えることで、さまざまなポージングが可能になる。振動で筋肉をほぐしながらストレッチすることにより、通常よりも高い効果が期待できるという。
DT-C1000の振動を浴びながら体をひねったり、足を上げたりすればさらに効率アップ。ポージングアシストバーがいい支えになる
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トレーニングジムからの問い合わせが殺到
DT-C1000は、振動によるマッサージ効果に加えて、ストレッチの補助や筋トレの効率アップにも使えるマルチな振動マシンだ。特に、狙った部位を振動させることができるのは、この振動マシンならではだろう。余談だが、仕事で歩き回ることの多い筆者の場合、37Hzの振動でふくらはぎを刺激したところ、マッサージをしてもらったかのように足が軽くなった。
DT-C1000の発表会で披露されたストレッチのデモンストレーション。最初の屈伸時に12cmだった目盛りが、2分間DT-C1000を使用した後は22cmに
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シニア世代なら筋力と柔軟性の維持に、働き盛りのお父さん世代なら全身の筋肉をほぐしてリラックスするために。またお母さんはダイエットに、もっと若い世代なら筋トレの効率アップにと、DT-C1000の用途は幅広い。家族全員で使えると考えれば、30万円弱という実売価格も納得できるのではないだろうか。
実際、前出の大出氏によると、トレーニングジムからの問い合わせも少なくないとのこと。100万円を超える業務用振動マシンに引けを取らない性能を備えた製品が3分の1以下の価格で手に入るなら、当然といえば当然のことだろう。
製品には、トレーニングやコンディショニングの効率をアップするための「ポージングブック」が付属する
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(取材・文/倉本 春、写真/酒井康治)
[ 日経トレンディネット 2018年8月10日付の記事を転載]
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