自由すぎる書店からオシャレな読書スペースへ

 新しいタイプの書店は「概念書店」と呼ばれ、若い社会人世代に好まれている。こちらも試し読みOKだが、地べたに座ったり寝転んだりする客がいないのが従来の書店との大きな違いだ。チェーンとしては、上海周辺をメーンに店舗展開している「猫的天空之城」のほか、江蘇省を拠点とする「字里行間」、四川省の「西西弗書店」や「言几又」などがある。

 典型的な「概念書店」は、木目を基調とした落ち着いた内装で、机の上に置きたくなるような雑貨なども扱っているのが特徴。もちろんカフェも提供しており、24時間営業とすることで差別化を図っている。

 一方で、個人経営の書店でもコーヒーを飲めるところが増えてきた。それらは雑貨店と書店を兼ねたような業態で、チェーン店と違って店舗が狭い。店内に並べられる本の数が限られるため、ラインアップが偏っているのが特徴だ。近くを通っても見過ごしてしまいそうな規模だが、口コミサイトなどで情報を得たマニアックな客が訪れる。

 そういった書店では、なぜか日本関連の書籍や雑誌が目立つ。外観からは分からないのだが、日本の小説や旅行ガイド、雑誌「知日」などが並ぶ店内を見ると、日本びいきとしか思えない。

 面白いのは、日本の生活が垣間見える書籍や雑誌はあっても、「中国でも大人気」と言われる日本のコミックが見当たらないことだ。日本に引けを取らない都会で暮らす中国人にとって日本文化は興味深いが、それはアニメやゲームなどではなく、日本人のライフスタイルそのものなのかもしれない。

最近のトレンドなのか、東野圭吾の作品が目立つ場所に置かれている
日本関連の書籍を扱う書店では定番の「知日」。右は同誌の日本漫画特集号
コミックが充実している個人経営の書店もあるにはあるが人気はない

著者/山谷剛史(やまや・たけし)氏

海外専門ITライターとしてライター業を始めるものの、中国ITを知れば知るほど広くそして深いネタが数限りなく埋蔵されていることに気づき、すっかり中国アジア専門のITライターに。連載に「山谷剛史の『アジアIT小話』」、「山谷剛史のマンスリーチャイナネット事件簿」、「中国ビジネス四方山話」など。著書に「中国のインターネット史 ワールドワイドウェブからの独立」(星海社新書)「新しい中国人 ネットで団結する若者たち」(ソフトバンククリエイティブ)など。

日経トレンディネット 2017年8月21日付の記事を転載]