私有地を走るレールレスの路面電車

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 実際に乗車してみたが、EVらしく走行は実にスムーズで静か。ただしコンパクトで背が高い分、 路面の変化で車体が揺れやすい。また対面シートとなっていることもあり、乗車感覚はバスというより電車に近いと感じた。試験運行ということで、クローズド、つまり他のクルマや通行人が存在しない専用コースを時速10km程度という極低速で運行していた。実際の運用時の最高速度は時速40km程度で、各種センサーとカメラにより、データにないコース上の障害物などを検知すると、自動で減速もしくは停止するため、「安全は十分に確保されている」(イオン担当者)という。

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 イオンが考えるこの無人運行バス、言葉からは普通自動車での自動運転を連想しがちだが、現実的には決められたコースを移動するので、レールレスな路面電車と思えばいい。専用のコースを設置する必要がなく、しかも無人運行だからコスト面のメリットは大きそうだ。ただ日本で運行できるのは私有地内だけなので、現時点では用途は特定の施設内での移動用に限られる。運行サービスを提供するDeNAの取り組みもまだ始まったばかりで、社内で実験は進められているというが、本格的な試験運行も今回が初。

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 コースも公園内の遊歩道を移動するだけなので、今月の試験運行はあくまでも無人運転バスの乗車体験が目的であった。とはいえ、将来的に日本でも出現すると見られる無人運転バスや自動運転バスの未来を垣間見ることはできた。

 問題は、議論は始まっているものの、現状の道路交通法では、公道での無人運転が不可能なことだ。また日本の道路事情でも、無人バスの性能や仕組みで今回のテストのような安全性が確保できることを証明しなくてはならないのだ。

 現時点では無人運転バスの種類はテスト車のみで、低速走行と少人数輸送を目的としているので、使用範囲が限定的になる。もちろん会社内や工場、施設内など限られた人が使うスペースでなら、そう遠くない将来に日本でも実用化されそうだが、取り組みはまだ始まったばかりだ。今回のイオンの事例で公園内でのテスト運行が成功しても、他の場所でのテスト運行などの計画は未定だという。

 イオンの事例で無人バス運行の可能性は示されたが、実用化にはまだまだ様々な課題が残っている。

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(文・写真/大音安弘 編集/日経トレンディネット

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