中小企業は「青学の原監督」に学べ

――若い社員を育成していくにはどんなシステムが考えられますか。

原田: 今の若者を育成するには、以前より手間暇をかけなければなりません。実は、若者研究所でも同じ問題に直面しています。5年くらい前までは、私が難題を振っても、耐え忍ぶか、がんばるという子たちがかなりいた。でも、今は同じことをすると辞めてしまうんです。言葉は悪いですが、今は若者に対して相当媚びるようになった自分がいます。企業でも同じことが起こっているのではないかと思います。

 その点、今目指すべきは、青山学院大学陸上部の原晋監督ですね。

 原監督は、選手たちと一緒に生活し、毎日会話しています。これと同じことをやれ、とまでは言いませんが、それくらいの手間暇をかけなければ、今の若者たちをつなぎ止めておくことはできませんし、成長してもらえない。

――彼らを労働力として育てる必要がありますからね。

原田: そうです。また、原監督のスタイルは、中小企業の採用にも参考になる部分があります。元々、青学陸上部の長距離チームは、いわゆる弱小でした。当然、優秀な選手は強豪校に行きたがるので、青学には来てくれません。今でこそレベルが上がってきましたが、よくて準一流の選手しか採れなかった時代があります。

 そこで原監督が考えたのは、「採用基準」の見直しだそうです。過去の実績をあえて見ず、話をした時の地頭の良さがあるか、自分で考える力があるか、自分で説明する力があるか──そういう基礎能力を基準にしたのです。マラソン選手を採用するのですから、身体能力や実績を見るべきではないかとも思いますが、原監督はそうではなかった。やはり人間は、マニュアルをこなすだけでは成長できません。自分の頭で課題を考えたり、強みや弱みを分析したりしないと、真の成長は不可能なのです。

 中小企業の採用にも同じことが言えます。優秀な大学を卒業した新卒を採りたくても、そこは大企業がさらっていってしまう。ならば、別の採用基準を設け、自社で手間暇かけて育成をしていくしかありません。その時、原監督のエピソードは参考になるのではないでしょうか。

(構成/森脇早絵)

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[ 日経トレンディネット 2018年7月27日付の記事を転載]