個人よりチーム間競争を好む?

――では、会社としてはどのような仕組みをつくって、彼らのやる気を高めればよいのでしょうか。

原田: 一つ目のポイントは、成果主義は今の若者たちには合わないということ。一部の優秀な層には響くかもしれませんが、基本的に彼らはゆとり教育を受けて育ってきた世代ですから、人を蹴落として競争して、自分だけボーナスが増えると嬉しい、という感覚は少ない。“平和民族化”してきているので、「自分だけ評価されて給料が増えると、悪い気がする」「競争して人を蹴落とすのは嫌だ」と思ってしまうのです。いわゆる「人のいい子」が増えています。だから欧米的な成果主義は、おそらく合わないでしょう。

 それよりも、「集団的成果主義」のほうが効果的です。個人間ではなく、チーム間で競争させるのです。例えば、「チームを組んでこのプロジェクトに取り組み、みんなで成果を出してください。このチーム全体で評価をしますよ」というふうにすると、業績が上がりやすい。

 学習塾でも、同じ傾向が見られます。昔は個人の成績を発表し、成績順に席を前の方から並べ、生徒たちの「悔しい」という気持ちを煽ったりしていましたよね。でも今の子たちはメンタルが弱いですから、そんなことをするとすぐに塾を辞めてしまいます。それよりも、3人でグループを作り、みんなの合計点で競い合おうというほうが、がんばるのだそうです。

若者活用の基本は、チーム単位のプロジェクトを組むこと(写真/Shutterstock)
若者活用の基本は、チーム単位のプロジェクトを組むこと(写真/Shutterstock)
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――チームの中で、特に頑張ったメンバーを評価して欲しい、という観点はないのですか?

原田: あまりそういう感覚はないようです。分かりやすく例えると、週刊少年ジャンプの人気漫画『ONE PIECE』のような形を好むんです。ONE PIECEでは、ルフィが突出して強くなるというより、仲間全員がレベルアップして助け合っていきますよね。そういうスタイルのほうが、今の若者たちにはマッチするのです。

 逆に言えば、一昔前であれば、「3人のチームで競い合うなら、俺はさぼって他の人にやらせておこう」と考える人もいたと思うんですが、今はそういう小ずるい子も少ない。ガツガツと徹夜で働く子はいませんが、一方で、ひどくサボる子も減ってきているのです。

――面白いですね。グループを作った時、リーダー的な存在は必要ないのでしょうか。

原田: そこが、今の弱点だと言えます。みんな、リーダーをやりたがらない。昔の若者だと、「ガツガツしていると思われるのはイヤだから立候補したくないけど、本当はリーダーを務めたい」という“やりたがり屋”も少なからずいました。しかし、今はリーダーになりたいという子が本当にいない。そこは、チル化している面もありますが、それ以上に「責任を取らされるのが怖い」という心理があるようです。

 日本生産性本部が16年に実施した「新入社員の『働くことの意識』」調査で、「新入社員に最終的に就きたいポストはどこか」と尋ねたところ、次のような結果が出ました。男性は、「社長」が06年は24.8%だったのが、16年は15.9%まで大幅にダウン。その代わり、「課長+係長+主任班長」が6.5%から11%まで伸びました。女性は、「社長」が6.2%から2.8%へ減少。「課長+係長+主任班長」は18.9%から30.8%まで大幅増となったのです。団塊世代にしてみれば、新入社員当時は多くの人が社長を目指していたわけですから、驚きの変化でしょう。

 実際は組織に入ると、課長や部長、係長のような中間管理職は、上と下に挟まれて一番辛い立場ですよね。でも、新入社員はそんな事情は分かりません。その世代にとっての中間管理職のイメージとは、「上層部とうまくコミュニケーションをとり、部下たちからも好かれ、非常にバランスのとれた役職」なんです。ある意味、コミュニケーションの中心にいるように見えているわけです。彼らにとって、それが魅力に感じる。立場という意味でも、バランス重視世代だと言えますね。

――それでは、彼らの中でリーダーは育たないかもしれませんね。

原田: ええ、そうなるとリーダーという発想そのものも変えていかなければなりません。集団コーチなのか、あるいは経営層という発想自体をなくしてしまって、全部プロジェクトベースで現場に裁量権を持たせるという組織体なのか。ここは今後、試行錯誤が必要な部分ではないかと思います。

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