スマホカメラの性能向上を受け、「コンパクトデジカメはもう必要ないかな」と感じている人も多いだろう。だが、日ごろスマホカメラで撮影している人にとっても魅力的な存在といえるジャンルのカメラがある。防水デジカメだ。
高価な防水ケースに入れる必要なく、そのままの状態で水中撮影できるので、ダイビングやシュノーケリングなどのマリンスポーツが楽しくなる今のシーズンに最適だ。多くのモデルは、大人の背の高さから落としても破損を防げる耐衝撃性能も兼ね備えているので、ハイキングや登山などのアウトドアレジャーにも向く。このように、破損を恐れてスマホを取り出すのをためらってしまうシーンでも臆することなくガンガン撮影できるので、一家に1台あると何かと便利に活躍してくれるはず。
スマホの破損が怖いシーンでもガンガン使えるのが防水デジカメの魅力。カメラの扱いに慣れない子どもがうっかり落としても破損を防げる点にも着目したい
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昨今の防水デジカメは、すべてUSB端子からの充電に対応しているので、電源が確保できない大自然でもモバイルバッテリーさえあればバッテリー切れの心配はいらない点も評価できる。
小さな子どもにカメラを使わせたい…と考える人にも向く。子どもがうっかりカメラを落としても壊れる心配がないので、安心して渡せる。今回は、防水デジカメのお薦めを5つ紹介したい。
(文/磯 修=日経トレンディネット)
屈指のタフネス性能、スマホとの自動連携機能も便利
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ニコン

COOLPIX W300

実売価格:4万3000円
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ライバルよりもタフネス性能をワンランク高めた筋肉質な防水デジカメ。防水性能は30mと、本格的なダイビングにも対応。耐衝撃性能は2.4mと、このクラスでは唯一の2m超えとなる。デザインは没個性でいまひとつ面白みがないが、迷彩色のカラーバリエーションが用意されているのは男心をくすぐってくれる。
比較的オーソドックスなデザインを採用するニコンの「COOLPIX W300」。大きめのグリップが搭載されており、ホールドしやすい
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カラーバリエーションはオレンジとイエローに加え、カムフラージュ(迷彩色)の3種類を用意。迷彩色は男女ともに人気を集めそうだ
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ニコンのコンパクトデジカメは動作がもったりとしている印象があったが、W300は意外にもキビキビしていて好印象だった。電源ボタンを押すとすぐに画面が現れて撮影スタンバイ状態になるのは評価できるし、再生モードと撮影モードの切り替わりも軽快でストレスは感じない。オートフォーカスの速度や精度も不満はない。しいていえば、背面のズームレバーが小さく堅いうえ、上下方向の操作なのがイレギュラーでやや扱いづらいと感じた。
3型液晶は92万ドットでとても見やすい。操作ボタンでは、小さなレバーで上下に操作するズームレバーがやや扱いづらいと感じた
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COOLPIX W300を使っていて便利だと感じたのが、Bluetoothでスマホと常時接続するSnapBridgeに対応していること。写真を撮影するごとに、サムネイルを自動的にスマホに転送してくれるのだ。撮影したあとカメラの電源をオフにしてもバックグラウンドで転送されるので、まったくの手間いらずで済む。サムネイルといっても1440×1080ドットあり、SNSなどで使うには十分なサイズで不満はない。スマホのカメラで撮影した写真と同等の感覚で扱えるので、SNS派にとっては頼もしい。
手持ちのスマホに専用アプリ「SnapBridge」を導入して接続設定しておけば、撮影した写真を自動的にスマホに転送してくれる
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自動転送される写真は2メガ相当とはいえ、画像サイズは1440×1080ドットある。SNSやメール送信には十分使えるサイズだ
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TG-5のようなマクロ機能は持たない割に価格はやや高めだが、頭1つ抜けたタフネス性能やスムーズなスマホ連携機能は魅力。特に、操作がキビキビとしている点は、このクラスで随一という印象を受ける。「ニコンのコンパクトデジカメはちょっと…」という印象を覆す意欲作だと感じた。
防水デジカメ感覚で使えるアクションカム
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GoPro

HERO5 BLACK

実売価格:4万2000円
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アクションカムの定番といえるGoProシリーズの最新&上位モデル。GoProといえば、マリンスポーツやスキー、サイクリングなどのアクティブなアウトドアレジャーを記録したい人向けのニッチなカメラ、という印象を持つ人もいるだろう。確かに、これまでのGo Proシリーズはやや使いづらい面があったが、HERO5は「誰でも扱える小型軽量の防水デジカメ」として幅広く薦められる存在になったと感じた。
手のひらにすっぽり収まるGoProシリーズのサイズ感を継承しつつ、本体のみで防水仕様としたのは評価できる
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まず便利だと感じたのが、背面液晶を標準で搭載したこと。「HERO4」などの従来モデルは背面液晶がなく、撮影時に構図の確認をするにもスマホと連携させる必要があったのがやっかいだった。HERO5では、背面液晶でライブビューの表示や写真の再生が可能になり、使い勝手は普通のデジカメにグッと近づいた。しかも、防水モデルでは珍しくタッチ操作に対応しており、本体の操作ボタンは相変わらず最小限ながら操作性はグンと高まった。
液晶のサイズは小さいが、そこそこ操作しやすい。音声で制御できるボイスコントロール機能も搭載しており、「GoPro、写真!」などと話しかけることで写真を撮影できる
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もう1つ、HERO5は本体のみで10mの防水性能を備えるようになり、ハウジングを装着することなく裸のままで水中撮影できるようになったのが便利だと感じた。ハウジングは脱着の手間がかかるだけでなく、装着すると音がこもって記録される欠点がある。HERO5はマイクが露出しているので、よりクリアな音声が収録できる。
本体に操作ボタンは2つしかないが、背面に2型のタッチパネル液晶を標準で搭載している
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HERO5のレンズは超広角の単焦点タイプで、光学ズームはない。そのままではワイドすぎて使いづらいが、メニュー画面で画角を段階的に切り替える機能を搭載しており、複数の単焦点レンズを利用しているような感じで撮影できる。望遠側はデジタルズームと同じ処理なので解像度は落ちてしまうが、SNSでの利用ならばクオリティー的に不満はない。
HERO5の価格は4万円超で、見た目や機能がGoProそっくりの“GoProもどき”のアクションカムが数千円で買えることを考えると高価だ。また、GoProシリーズの哲学とはいえ、汎用性の高い三脚穴をかたくなに搭載しないのは、やはり不便だと感じる。
とはいえ、手のひらにすっぽり収まるGoProならではの小型軽量ボディーを維持したまま、裸のままで使える防水性能やタッチパネル液晶の搭載で使いやすさを高めたのは評価できる。多彩な固定用アクセサリーを使うことで、一般的な防水デジカメでは不可能な撮影ができることを考えれば、普段使っている一眼レフやミラーレスにプラスすると便利に活躍するはずだ。
昆虫や植物などの接写を楽しみたいならば唯一無二の存在
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オリンパス

Tough TG-5

実売価格:5万円
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昆虫や植物などの撮影に向く、接写性能に優れた異色の防水デジカメ。レンズの先端から1cmまで被写体に近づけるうえ、その状態で光学ズームが働くので、まるで虫眼鏡で見ているようなマクロ撮影ができる。顕微鏡モードを利用すると、まさに顕微鏡のような異次元の撮影ができるのが楽しい。
高級感のあるデザインが特徴的な「Tough TG-5」。レンズは中央部に搭載しており、うっかり指がかかってしまうことは少ない
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大型のモードダイヤルも搭載しており、操作性は一般的なコンパクトデジカメとほとんど変わらないのがよい
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基本的に、接写時はピントの合う範囲が狭くなり、昆虫の接写だと頭以外はボケてしまう。その欠点を解消するため、TG-5はピント位置を変えて連写した写真を合成して手前から奥までピントが合った写真を生成する深度合成機能を備えるのが特徴。カメラ単体で合成処理されるので、Wi-Fiでスマホに転送すればすぐさまSNSなどで活用できるのが便利だ。
接写時はピントの合う範囲が狭くなるので、前後が大きくぼけてしまう
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深度合成機能を利用すると、前後の広い範囲にピントが合うようになった
接写時はカメラが被写体と接近するため、被写体がカメラの影になって暗くなることが多い。この問題を解決するためのアクセサリーとして、レンズの周囲に取り付けることで被写体を明るく照らしながら撮影できるリングライトを用意しているのが面白い。LEDライトとして使える「LG-1」の実売価格が4500円前後、内蔵フラッシュを円形に発光する「FD-1」が5200円とやや高いのが欠点といえるが、使うのと使わないのでは仕上がりの完成度がまるで変わってくる。
別売の「LEDライトガイド LG-1」(実売価格は4500円前後)を使うと、本体内蔵LEDの光をレンズの周囲に回してリングライトとして使える。マクロ撮影の際に欠かせない
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15mの防水性能や2.1mの耐衝撃性能、100kgの耐荷重など、タフネス性能も十分だ。4K動画の撮影に対応する。カメラ自体は5万円前後とやや高めながら、昆虫や直物などのネイチャーフォトの撮影を楽しみたい人にとっては見逃せないカメラとなるだろう。
2万円台半ばで買えるおしゃれな防水デジカメ
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富士フイルム

FinePix XP120

実売価格:2万6000円
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あまり知られていないが、防水デジカメ界でベストセラーとなっているのが富士フイルムの「FinePix XP」シリーズだ。デジカメの黎明期から存在したFinePixで唯一の生き残りでもある。20mの防水性能や1.75mの耐衝撃性能、防塵性能など、防水デジカメに求められる機能をしっかり備えつつ、ライバル機種よりもひと回り以上安い2万円台半ばの手ごろな価格に抑えた点が幅広い層に高く評価されている。
最新モデル「FinePix XP120」のポイントといえるのが、防水デジカメであることを感じさせないスリムなデザインだ。防水デジカメは、アウトドアギア風のゴツゴツとした男性好みのデザインを採用する機種が多い。だが、XP120はなめらかな流線型のデザインを採用しており、言われなければ防水デジカメだとは分からない。アウトドア以外のシーンで浮いてしまうことがないので、日常的に使いたい人に向く。低価格ながら安っぽさを感じさせない仕上げも評価したい。
流れるようなデザインが特徴の「FinePix XP120」。実売価格は2万6000円前後と手ごろだが、安っぽくはない
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操作ボタン類はオーソドックスで扱いやすい。液晶も92万ドットの3型で、視認性はとてもよい
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機能は全般的にシンプルでライバル機種のような接写機能などは備えないが、画面内の一部の範囲のみを動かしたショートムービーが作成できる「シネマグラフモード」がユニークだ。スマホアプリを使わず、カメラ本体だけで作成できるのは面白い。使いどころは限られるが、意外さやインパクトの大きさでSNS受けしそうだ。
FinePix XP120のシネマグラフモードで撮影したショートムービー。右半分のみを動くように指定したので、左半分は静止した状態になって面白い。撮影時間が最大5秒間と短いのは物足りなく感じる
価格がとにかく安いうえ、誰にでもマッチするシンプルなデザインがXP120の魅力。気負わず使える手ごろな防水デジカメとして、幅広い層に薦められる。
アクションカム感覚でも使える防水デジカメの入門機
立体感のある個性的なデザインと、求めやすい価格設定が魅力の防水デジカメ。実売価格は3万円台前半と、2万円台半ばで買える富士フイルムの「FinePix XP120」にはかなわないものの、防水デジカメのジャンルでは手ごろな価格に抑えられている。
ゴツゴツとした装飾が特徴的な「WG-50」。本体の中央部にレンズを備える
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本体は左右の幅があり、やや大きく感じる。背面液晶は23万ドットと粗いうえ、16:9比率なのが気になる
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WG-50がユニークなのは、自転車のハンドルやヘルメット、手首などに取り付けるための純正アクセサリーが充実していること。これらを利用すれば、WG-50をアクションカムのように利用できる。GoProなどのアクションカムは高価なので、WG-50をさまざまな用途で使えるのは魅力的だ。
レンズの周囲に6つの白色LEDを搭載しており、ボタン操作で点灯する。オリンパスのTG-5のように別売のオプションを装着する必要がないものの、明るさはいまひとつなので、影をやや持ち上げる程度にとどまる。接写性能自体もTG-5のほうが優れるので、接写を重視するならば価格は高いがTG-5を選ぶのがベターだろう。
レンズの周囲にある6つの白色LEDを光らせると、リングライト的に利用できる
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防水性能は14m、耐衝撃性能は1.6m、耐荷重は100kgと、防水デジカメとしての性能は平均的だ。全般的に、撮影性能や装備で不満はないが、液晶パネルだけはガッカリ感が強かった。23万ドットと荒さが目立つうえ、アスペクト比が16:9なので4:3比率の写真はかなり小さく感じるからだ。
とはいえ、ソコソコ求めやすい価格もあり、「防水デジカメを買っていろいろなジャンルで使ってみたい」と考える人に向くカメラといえる。
[日経トレンディネット 2017年7月27日付の記事を転載]
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