果物はビタミン類や食物繊維などの栄養素が豊富に含まれており、糖尿病や高血圧などの生活習慣病の予防や改善にも効果が期待されている。男性は、甘さや酸味が苦手で果物を食べないという人も多いが、女性はよく食べているほうだと思われていた。しかし、2014年度国民健康・栄養調査によると、果物の1日あたりの目標摂取量は200gだが、全世代で男女ともに摂取量が少なく、特に10代後半~40代は果物不足が指摘されている。
平成26年度国民健康・栄養調査より
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最近は健康志向の人が増え、栄養価が高いとされるスーパーフードと呼ばれる食品も注目されている。しかし、これらの食品は身近なスーパーマーケットなどで入手しにくいことも多い。そんななか、身近な果物のキウイフルーツがスーパーフードのように、心身を健康に保ち、向上させる驚くべき機能があることが分かったという発表が、7月14日に東京・千代田区で行われた「キウイフルーツ・プレスセミナー」であった。
現在日本の市場で出回っているキウイフルーツは主に3種類。果肉が緑色のグリーンと、果肉が黄色のサンゴールド、ゴールドに分かれる。キウイフルーツは、果物の中でも群を抜いて栄養価が高く、特にビタミンC含有量が多いことでも知られているが、駒沢女子大学・人間健康学部健康栄養学科の西山一朗教授によると、果肉の色によってそれぞれに特徴があるという。
「グリーンに多く含まれるのが食物繊維で、レタスと比べると2倍以上の含有量。また、ゴールドやサンゴールドはビタミンCが豊富で、サンゴールドを1個食べると1日の推奨摂取量の1.5倍以上を取ることができる。また、血管や細胞などの老化を抑える働きがあるビタミンEも豊富。高血圧予防に効果的なカリウムは、3種類に共通して多い」(西山教授)
「1日に必要な栄養素の摂取量を100gの果物で何%補えるかを計算した『栄養素充足率』で見ると、サンゴールドは15.1%、グリーンは10.6%になり、よく食べられている果物の中で最も高い。キウイフルーツ1個は約100gなので、1日1個食べれば、不足しがちな栄養素を補うことができます」(西山教授)
主要フルーツの栄養充足率スコア(ゼスプリ インターナショナル調べ)
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肉をたくさん食べても安心? 消化促進作用に注目
2016年4月にニュージーランドで開催された『第1回キウイフルーツの栄養および健康効果に関する国際シンポジウム』では、キウイの三次機能(健康状態、身体能力、心理状態を維持・向上させる機能)についての研究発表が行われ、なかでも「キウイは消化器系に良い影響を与える」という研究結果に注目が集まった。
キウイフルーツは食物繊維が豊富だが、特にグリーンキウイには、たんぱく質の分解酵素の一種であるアクチニジンが多く含まれ、牛肉や鶏肉などの食肉たんぱく質や、牛乳などに含まれるカゼイン(乳たんぱく質)の消化を促進する作用が期待されている。
最新の臨床試験では、21~48歳の健康な成人男性10人を対象に、400gの赤身ステーキと200gのグリーンを食べたときの、胃の不快感(上腹部の痛み、胃の鳴る音、膨満感、げっぷ等)を調査した。すると、被験者すべてが胃の不快感が軽減したと答え、とくに膨満感を感じた割合が低かったという。
キウイフルーツは食事で一緒に取るか、食後すぐに食べることが望ましいが、外食で肉を食べたときは、キウイを食べることがかなわない場合もあるだろう。そのときは、「時間が空いても食べておくと、消化を助ける働きが同等に期待できる」と西山教授は言う。
「通常食べたものは胃で1~3時間程度とどまるといわれており、食後1~2時間以内にグリーンを食べた場合、たんぱく質の消化を促進する可能性があると考えられる。満腹時に何個も食べられないので、1~2個食べれば十分だろう」(西山教授)
特に夕飯に肉を食べたときは、睡眠中の消化活動を促し、翌朝の胃もたれを防ぐためにも、キウイを食べておいたほうが良さそうだ。
学会で初めて明らかになった、便秘改善の効果
もうひとつ、今回の学会で話題となったのが、ニュージーランド、イタリア、日本の3カ国共同の臨床試験で初めて明らかにされた、キウイフルーツの食物繊維による「便秘改善作用」だ。
キウイフルーツの食物繊維は、他の食品に含まれる食物繊維よりも保水力が高いため、消化管内で水分を多く吸収し、大きく膨張する特徴があるという。さらに、大腸の運動を促進する短鎖脂肪酸も増加させるので、相乗効果で便秘の改善を期待することができるのだそうだ。
さらに、大腸の環境を再現した試験管内での研究では、キウイの食物繊維には、ビフィズス菌などの腸内にある善玉菌を増やしながら悪玉菌を抑制し、腸内環境を整える作用があることも発表された。
まだまだある、キウイフルーツのうれしい機能
そのほかにも、ゴールドを毎日2個ずつ食べ続けることで、血液中のビタミンC濃度が良好な状態に保たれ、壊血病(ビタミンCの不足により、体内の各器官で出血性の障害が生じる)の予防につながるほか、ビタミンCが脳内神経伝達物質に働きかけることにより、マイナス思考がプラスに変わり、精神状態の安定につながる可能性も指摘された。
また、食後高血糖(食後に血糖値が下がらず、高い値が続く状態)は動脈硬化を悪化させ、脳卒中のリスクを高めるといわれているが、炭水化物とキウイフルーツを一緒に食べることで、食後の血糖値の上昇がゆるやかになり、急激な低下を抑える効果も期待されている。
ただし、キウイフルーツを食べるときには少し注意が必要だ。「グリーンは食物繊維が豊富なので、食べ過ぎるとおなかがゆるくなったり、腹痛になったりする場合もあります。食べる量には注意して、何か異変があれば、すぐに専門家に相談してください」(西山教授)
生食が基本、飽きたら料理にも
西山教授も日頃からキウイフルーツを食生活に取り入れているそうだ。「ビタミンCの供給と便秘改善を目的に食べている。半分にカットしてスプーンですくって食べるのが、手間がかからずおいしく食べられる」(西山教授)。キウイフルーツに含まれるビタミン類などの栄養素は、加熱調理することで失われてしまう割合が高いため、栄養素をしっかり摂取するには生食が好ましいそうだ。
体に良いことは分かっても、毎日生食で取るのは飽きてしまう。そんなときは、調理法を変化させることも、毎日継続的に食べるためのひとつの方法だ。そこで、今回のセミナーで紹介されていた、キウイフルーツを使った料理をいくつか紹介しよう。
暑い日が続くと、食欲がなくなることもある。そんなときには、グリーンとサンゴールドをショートパスタ、生ハム、タコ、とうもろこしなどとあえた「スーパーサラダ」は、主食にもいいだろう。また、薄切りにしたグリーンをサニーレタスや素麺などと巻いた「生春巻き」はさっぱりとした味わいだ。
キウイフルーツ2種類にショートパスタ、生ハム、タコ、とうもろこしなどと和えた「スーパーサラダ」
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薄切りにしたグリーンをサニーレタスや素麺などと巻いた「生春巻き」
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まだ暑さが続くこの季節、食生活が乱れてしまうこともあるだろう。たとえば、肉を食べ過ぎたときにスッキリさせる一つの方法として、キウイフルーツを覚えておくといいかもしれない。
(文/小口梨乃 編集/日経トレンディネット)
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