食べ物のことが原因で交際相手と気まずくなるケースも?

 さらに自炊なら食べないようにできるが、難しいのが外食時。食物アレルギーの人が、仕事で取引先との会食に行かなければいけないときに、自分が会食をセッティングする側ならいいが、相手からの誘いだった場合、いちいち食物アレルギーのことを伝えて気を使わせるのも……とためらわないだろうか。

 実際、SNSで大人の食物アレルギーについて検索すると、「飲み会に参加できない(しづらい)」「食べ物のことが原因で交際相手と気まずくなった」「食物アレルギーのことを店に問い合わせなければならないからと、いつも幹事役にならざるを得ない」といった投稿が見つかる。大人だからこそ食物アレルギーの対処が難しい現実もあるのだ。

 では、飲食店は対応していないのか。もちろん10年前に比べれば、対応する飲食店が増えている。特に2013年の秋ごろ、ホテルや百貨店、レストランなどが提供するメニューや料理などの食品表示について、実際に使われていた食材と異なる表示が行われていた事例が発生したことがきっかけで、外食などにおけるアレルゲン情報の提供が促進されるようになった(参照:消費者庁「外食等におけるアレルゲン情報の提供の在り方検討会情報」)。

 食物アレルギーの症例数が多いものおよび症状が重篤であり生命に関わるために特に留意が必要なのが、特定原材料7品目(卵、乳、小麦、えび、かに、落花生、そば)。これらは大手のレストランチェーン店をはじめ店舗にあるメニュー表や公式サイトで、それぞれのメニューについて公表されていることが多い。またそれ以外でも問い合わせれば教えてくれる飲食店や個別対応をうたう店が増え、飲食店の食物アレルギー対応は急速に進歩しているといえる。また、旅行業界などでも対応が進みつつあり、全国旅館ホテル生活衛生同業組合連合会では「旅館ホテルにおける食物アレルギーのお客様対応マニュアル」を出し、個別対応が進んでいる。ただし、表示方法がバラバラであったり、表示の厳密性など課題が多いのも現実だ。

(C)はしもとあやね / PIXTA(ピクスタ)
(C)はしもとあやね / PIXTA(ピクスタ)
[画像のクリックで拡大表示]

次ページ 治るはずのものが治らず、そのまま成人