ガラスの壁面、光の壁、逆コーン状の秘密は
まずは、外観。ロビー全体に広がるガラスの壁面「ガラスカーテンウォール」を見ながら、デザインや構造について解説があった。この壁は単にガラス板が並んでいるだけではなく、全体がフラクタル曲線(雲や海岸線など自然界にある複雑な形を同じパターンの図形で表したもの)を描いていたり、実は垂直面と水平面でできているということ。さらに水平面は人が拭いていること、垂直面は機械が掃除しているのだけど、その掃除機械がスパイダーと呼ばれていて本当に蜘蛛の絵が描いてあることなど、ガラスの壁面一つでも面白い話がたくさん聞けた。
正面に回って、円すい形の入り口へ。入り口の前にある円盤のような建物は実は傘立てが並ぶスペースなのだ。これらの独特のデザインを見たら、館内へ。ロビーでは、この建物の意匠を担当した黒川紀章氏についての解説があった。この美術館は黒川氏の生前に開館した最後の大規模美術館なのだそうだ。黒川氏はレストランやロビーなど、人が行き来して交流するスペースを重視していた。その考えに基づいて、ロビーは途中に柱がない構造にして広々とした空間を作り出し、レストランは全体を見渡せる吹き抜けの最上階に位置している。
この広いロビーを確保しつつ、上部にレストランを設けるための工夫として、ロビーには大きな逆円すい形のコーンがある。このコーンの最上階がレストランになっていて、下は十分なスペースが取れるという仕掛けなのだ。また、レストランの下、コーンの中には厨房がある。ムダのない設計だ。
2階では、館内を照らす照明が壁になっている「光壁」の説明を受け、床から風が吹き出すようになっている空調などを見学。また、2階にあるカフェが、映画『君の名は。』に登場したことで人気になっていること、展示室の概要などの話もあった。本来のツアーでは展示室の中も見学できるのだが(ツアーは展示室から始まる)、今回は全展示室が使用中だったので、写真による解説のみ。しかし、この展示室の仕組みはなかなか面白いので、ぜひ本番の建築ツアーで体験してほしい。
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