ラーメンは老若男女を問わず愛される日本人の国民食。コンビニではチルドやインスタントのほか、冷凍ラーメンも多数展開されている。レンジアップで手軽に作ることができ、本格的な味わいが楽しめると評判だ。そこで今月のコンビニ食品実食テストでは、夏に食べたい「つけ麺」と「担々麺」を比べてみた。今回はつけ麺編をお届けする。
3商品は具材に大きな差がある
今回のコンビニ食品実食テストは、夏でもツルッと食べられる冷凍つけ麺が対象だ。各コンビニで味はどれだけ違いがあるのか、また本当においしいのか。その疑問を解消すべく、味香り戦略研究所による味覚分析と、食のプロによる実食テストで、コンビニ大手3社の冷凍つけ麺をチェック。セブン-イレブン、ローソン、ファミリーマート、それぞれの味の傾向を明らかにしていく。
実食するのは以下の3商品だ。
○セブン-イレブン「セブンプレミアム 具付きつけ麺」(250円)
○ローソン「ローソンセレクト つけ麺 1食」(258円)
○ファミリーマート「ファミリーマートコレクション 極太つけ麺」(164円)
各コンビニの冷凍つけ麺は、ボイルでもレンジアップでも調理できる。ボイルの場合は袋入りのインスタントラーメンと同様に麺を茹で、電子レンジを使用する場合は内袋に入った麺をそのままレンジで加熱する。麺は加熱後に冷水で洗い、ぬめりと熱を取り除く。液体スープは器に入れて熱湯と混ぜれば完成。今回はレンジで調理し、オーソドックスな冷たい麺と温かいスープの「ひやあつ」で食べ比べた。
セブン-イレブンとローソンのつけ麺は具材入り。それに対してファミリーマートは具なしで、その分価格が2商品と比べて税込みで100円ほど安い。
具材を見ていこう。セブン-イレブンもローソンも、入っているのはチャーシューとメンマ。ただ、両社でチャーシューの形状が異なっている。セブン-イレブンは大きなチャーシューが1枚入っていて、ローソンはチャーシューが細切りになっている。厚みは同程度だが、総量としてはセブン-イレブンのほうが多いように見える。メンマもセブン-イレブンのほうが長く、少し多いようだ。
麺に関しては、セブン-イレブンの麺が一番太くて色が濃い。次に同じくらい太いのがファミリーマートで、ローソンの麺は2商品に比べると細くて色も薄い。麺は太いほうがコシが出せるので、セブン-イレブンとファミリーマートは食べ応えのある麺に仕上がっていると思われる。ローソンはあえて細めにすることで、食べやすさを狙っているのではないだろうか。
お湯で溶いたスープを見比べると、ローソンとファミリーマートは表面に油の膜が見られた。セブン-イレブンも油は浮いているが、2商品よりは少ないようだ。色の濃さは3商品ともほとんど同じで、見た目からは味の濃さは予想できない。また、ローソンとファミリーマートのスープは魚粉が別添えになっている。食べる直前にスープに入れるため香りが際立つ。
セブン-イレブン
「セブンプレミアム 具付きつけ麺」
大きなチャーシューとメンマが入ったつけ麺。豚骨と鶏ガラスープをベースに魚粉を加えたスープは、柚子のほのかな酸味と香りをプラスしている。コシのある太麺も特徴。税込み価格270円
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ローソン
「ローソンセレクト つけ麺 1食」
つけ麺の王道である濃厚な魚介豚骨醤油味。麺は茹で上げ直後に水洗いし、冷水でしめた後に冷凍。そのためモチモチ&コシのある食感になっている。刻みチャーシューとメンマ入り。税込み価格278円
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ファミリーマート
「ファミリーマートコレクション 極太つけ麺」
小麦の風味豊かな極太麺を使用。スープは魚介と豚骨を合わせ、まろやかに仕上げた魚介豚骨醤油味。香りが増す魚粉パック付き。具は入っていないが、税込み価格177円と他の2商品より100円程度安い
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スープの色の濃さは似ているが、その味に違いはあるのだろうか? また、麺の太さや色はおいしさに関係があるのか? 味覚分析の結果とプロが実食した感想から、それぞれの冷凍つけ麺の特徴を見ていこう。
セブン-イレブンはあっさり、ローソンとファミマは濃厚
各コンビニの冷凍つけ麺の「麺+スープ」を、味香り戦略研究所の味覚センサーで分析。麺を口に入れた状態に近い味覚を測定している。その結果は棒グラフの通りだ。
■冷凍つけ麺の味覚分析の結果
ローソンとファミリーマートは旨味・コクの数値が高く、しっかりとした味付けになっている。セブン-イレブンはコクはあるがあっさりとした味付け
ローソンとファミリーマートは棒グラフの長さはほぼ同じだが、それぞれ味覚の数値に若干の違いがある。同研究所の味覚参謀(フェロー)である菅慎太郎氏は、ローソンのコクの数値が高い点に着目し、「両社はともにしっかりとした味付けだが、ローソンはコクを効かせて、つけ麺特有の濃厚さを印象づける味」と分析する。
一方のファミリーマートは、「若干旨味が強いがローソンと近似しており、両社の商品を多くの人が同一と認識してもおかしくはない」と菅氏は話す。
対照的にセブン-イレブンについて、菅氏は「他社よりあっさりとした味付けだが、コクの数値は同程度なのが特徴」と分析。「麺を含めた全体のバランスとしてのおいしさを考慮した設計」と解説する。
では、味の印象に大きく影響する塩味と旨味のバランスについて下図で詳しく見てみよう。
■冷凍つけ麺の塩味と旨味の関係
ローソンとファミリーマートは濃厚な味わい。2商品に比べるとセブン-イレブンは塩味も旨味も控えめ
ローソンとファミリーマートは塩味・旨味ともに利いた、濃厚な味付けだということがより鮮明になったはず。若干ではあるがファミリーマートのほうが先味である旨味が強いので、食べた瞬間に口の中においしさが広がるインパクトのある味付けになっているのだろう。逆にローソンは後味であるコクが強く、後を引くおいしさを狙っているものと思われる。また、セブン-イレブンがバランスのいいあっさりとした味付けになっていることも分かったはずだ。
これらの結果を頭に入れて、次ページからのプロの審査員による試食をチェックしてほしい。審査員たちの感想、この味覚分析による味の傾向から、自分の好みに合った冷凍つけ麺を選んでほしい。
森本氏~ローソンは麺がモチモチ&細めで女子好み
ラーメン女子としてメディアで注目を集める森本聡子氏に実食をお願いした。どこのつけ麺を食べているのか分からないブラインド状態で実食し、順位を付けてもらった。各コンビニのつけ麺の感想は以下の通りだ。
■1位 ローソン
「麺とスープのバランスがとてもいい」との理由から、ローソンを1位に選んだ森本氏。麺は「粒々が見えるので全粒粉っぽい。モチモチ感があって、細くて食べやすい」とコメント。しかし「小麦の香りがもう少しあると◎です」とも。スープに関しては「油が多めだけど味自体はマイルド。麺とのなじみがすごくいい」と、麺との相性の良さを高く評価した。具材入りで、なおかつチャーシューが細くカットしてある点もお気に入りの様子。「具材が細かいほうが女子的には食べやすい」と話してくれた。
■2位 セブン-イレブン
2位に選んだのは「昔ながらの安心感のあるおいしさ」と評価したセブン-イレブンだった。スープは油が少なめで、「醤油が利いていて親しみやすい味」と話すも、「最後に酸味が残る」ところが少し気になったという。スープよりも高評価だったのが麺で、「小麦の香りがとてもよくて驚きました」と絶賛した。また、具材に関しても「チャーシューが大きくてお得感がある。分厚いメンマもいっぱい入っているので満足度が高い」とコメント。そのため「男性やもともとつけ麺が好きな方に好まれる」との感想を述べた。
■3位 ファミリーマート
残念ながら3位となったファミリーマートだが、麺については「加水が高くて一番モチモチしている。少し時間がたってもモチモチ・ツルツル。麺好きにはこれ!」と好印象だったという。しかし「スープが少し油っぽく感じたのと、酸味があとに残るのが気になった」と、麺のよさだけが際立っていたと話す。具が入っていない点については、「自分でアレンジができるのはいいけど、最初から具入りのほうが気軽に食べられるのでうれしい」とコメント。全体的には1位に選んだローソンと方向性が似ていると話すも、「麺のモチモチ感は◎ですが、太いのでスープとの絡みがイマイチ」との理由から順位を下げた。
■総評
「ラーメンはスープを楽しむもの、つけ麺は麺を楽しむものだと思っています。だから麺のおいしさ、麺が楽しめるかどうかが私の中ではつけ麺の評価につながります。ファミマは一番モチモチしていてツルツル、ローソンはモチモチ感もあって、細いのでスルスル食べられる。香りの良さはセブン-イレブンがダントツ。どれもコシがあっておいしいので、その日の気分で選んでもよさそうです。スープの味はローソンは今っぽい感じで、セブンは昔ながらのつけ麺の味。好みの問題なので本当に僅差でした。このレベルなら大満足! ラーメンを食べたくてもひとりでお店に行くのに抵抗がある女子は、絶対に買う価値があると思いますよ」
はんつ氏~セブン-イレブンは麺のおいしさと具材の大きさが魅力
はんつ遠藤氏
テレビや雑誌、書籍など数多くのメディアで活躍するフードジャーナリスト。取材軒数は8500軒を超え、その豊富な知識と経験を生かし、飲食店プロデュースなども手がける。特に麺類と焼き鳥に詳しい
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この実食テストでもおなじみの人気フードジャーナリスト、はんつ遠藤氏に実食をお願いした。どこのつけ麺を食べているのか分からないブラインド状態で実食し、順位を付けてもらった。各コンビニのつけ麺の感想は以下の通りだ。
■1位 セブン-イレブン
「麺が一番おいしい」との理由から、セブン-イレブンを1位に選んだはんつ氏。「麺の色味がくすんでいるので、今流行りの全粒粉を使っているんじゃないかな。小麦の香りに香ばしさが加わっています」と話す。続けて「ツルッとしていて食べやすい。しばらく置いておいてもくっつかない」とコメントした。具材に関しても「メンマも多いし、チャーシューも大きくて厚みがある。こだわっていて素晴らしい」と高く評価。ただし問題はスープだという。「甘さや辛さ、酸味などはあるものの、他の2商品と比べて油分が少なく深みが足りない。渋味も少し強いかな」と感想を述べた。とはいえ、麺のおいしさ、具材の満足度から総合評価では1位に選出した。
■2位 ファミリーマート
はんつ氏が2位に選んだのはファミリーマートで、高く評価したのはスープの仕上がりだった。「甘味を強くしてあり、あとから辛味と酸味がついてくる甘さ重視のスープ。広がりのあるフルーティな甘さで、スープは一番おいしい」とコメント。麺に関しても「小麦のよさを感じる、モチモチの麺を目指している」と高評価だったが、1位に選んだセブン-イレブンのほうがおいしかったとのこと。また、「具が入っていないのはやっぱりさみしい。具があれば1位だったかもしれない」とも話してくれた。
■3位 ローソン
ローソンのつけ麺は3位となったが、「3つを同時に食べ比べているから3位ですが、これ1つだけ食べるとお店とそこまで変わらないクオリティ」だという。麺については「モチモチを目指しているけど少し細い。太いほうがモチモチ感が出る」と話す。スープに関しても「ファミリーマートに次ぐおいしさ。方向性は似ていて、甘さを強調したタイプ」とコメント。具材が入っている点も高く評価し、「麺が太ければ1位の可能性もあった」とのこと。
■総評
「正直なところ、1位から3位まで気分によって順位が変わるくらい僅差でした。3商品とも麺のクオリティがとても高く、それぞれに真剣さが感じられました。ラーメンの麺は35cmあるとおいしいと言われていて、意外とそこまで長くはないお店も多い。つけ麺は太い分20数cmが普通ですが、セブン-イレブンのつけ麺は35cmくらいあるんじゃないかな。それだけも相当すごいことなんです。どの商品のスープも昔と比べると単に甘いだけじゃなく、辛味や酸味もあるので進化していることが分かります。これにネギでも加えればお店で出せるレベルですよ。1位に選んだセブン-イレブンは具の存在が大きかった。でもそれぞれの価格を知ると、ファミリーマートがダントツで1位ですね」
(文/津田昌宏、写真/中村宏)
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